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伊達好きねこたの歴史関連や創作物についての呟き処+創作小説置き場(もちろんフィクション)です。
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2025.11.19Wednesday
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「都の傍にあらずとも」
2021.05.24Monday
成実+政宗+小十郎+蒲生氏郷+その他のみなさん

成実たん名生へ行く、の巻。
出会いは最悪、別れは最高。成実人質事件。

蒲生さんは近江の日野出身です。

家主は別に、奥州を馬鹿にしちゃいないんだからね!
蒲生さんの思考なんだからね!!ヽ(●Д´;)ノ

成実たんが名生城に入ってから解放されるまでだけ書けたら良かったんですが、そうすると知らない人は『なんで成実人質になってんの?』となる、ならばその原因の葛西・大崎一揆を、じゃあその一揆が起った原因を…とどんどん伸びてしまいました。
その辺の流れを書こうとすると、説明文みたくなっちゃって…(●へ´;)

本当は、国分盛重を先に出したり、それを拒否られたり、成実か留守叔父様って指定されて、結局は成実が盛重と一緒に行ってたり、と面白味がある(とか言っちゃダメかな?)んですけど、うちは別に史実に忠実な歴史小説を書いてる訳じゃないんだから、と簡潔に纏めました。
盛重ファンの方とかいらっしゃったら、ゴメンナサイ。

あ、なんだか例の密書は偽物でした、てな終わりになってますが、家主は本物だと思ってますよー。
悪意を持って一揆を扇動したと思ってますよー。
でも、罪悪感や同情心があったのも事実だと思います。

天下人の名前を出さないのは、家主が個人的に嫌いだから。
木村父子や須田伯耆の名前を出さないのは、実在の人物を悪役にする事に抵抗があるから。
浅野弾正は挙げたかったけど、必要不可欠ではないので、判りやすく簡潔にする為省いちゃいました。

もしも家主が福島辺りの人間だったなら、訛りまくる成実と、言葉が通じなくて困惑する蒲生さんを書きたかった!
エセ方言程カッコ悪い物はないので諦めましたが、ザネの台詞を福島弁に訳してくださる方、常々募集中です!(*●∀゜*)b



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「証人を出す?誰を?」
「成実だ。」
二人きりの室内で、するめを噛み噛み尋ねる従弟に、政宗は直球を投げた。
「ふーん……て、俺!?」
あまりにさりげなかった為、大幅に気づくのが遅れたが、眼前の主君が告げたのは、間違いなく我が名である。
「なんで俺?」
「先方が指名してるんだ、仕方ないだろ。」
吐き捨てられた言葉に、成実は露骨にむくれて見せる。
「殴っちゃいそう…。」
「迂闊な事をするなよ。お前なら上手くやれるだろ?信じてるぞ。」
政宗は不敵な笑みを浮かべて、従弟の両肩を強く打った。
「梵はずるいな…。」
信じてる。
そう言われると、彼はどんな気に食わぬ事でも理不尽な事であっても拒まず、何としても期待に応えようとする。幼い頃からそうだ。当然、共に育った政宗が知らない訳はない。
知っていて口にする「信じてる」。
真っ直ぐな隻眼に射抜かれ、成実は苦虫を噛み潰した様な表情(かお)で肩を竦めた。

古くから近隣を領し、長年、伊達家とも対立と和睦を繰り返して来た、葛西氏と大崎氏。
先達て、小田原への参陣を拒否した両氏は、天下人の怒りに触れ、改易の憂き目を見た。
その両氏の所領を賜った新領主は、急な大身出世につき分別ある老臣もなく、無闇な検地と存外な増税に加え、寄せ集めの荒くれ家臣達は民家に押し入り、強盗を働く、女子(おなご)と見れば次々攫うと、劇甚な所業を繰り返し、ついに両氏の旧臣達から百姓に至るまでが、その怒りを爆発させた。
「手を貸して欲しい。」
乞われた政宗は、複雑な面持ちであった。
そもそも、葛西・大崎氏が小田原へ行けなかったのは、服属状態にあった伊達への遠慮の為。それで取り潰されてしまったのだから、罪悪感はある。
しかし、表立って一揆に手を貸してやるなど、出来ようはずもなく―――。
「武器をやる。だが、兵は出せない。」
苦渋の決断だった。
新領主とその家中の横暴ぶりは目に余る。感情だけで動ける立場であったなら、迷わず味方に附いただろう。
が、政宗が握っているのは己が命に限らず、家中数多の生死なのだ。
諸般を駆使した説得で如何にか納得させ、一揆勢は大量の弓矢鉄砲を手に去って行った。

間もなく狼煙は上がった。
彼らの勢いに、新領主は居城を追われ、一つ城に押し込められてしまう。白ける程に、あっさりと。
しかし、恐れていた事態はすぐに起こった。
『蒲生氏郷と共に一揆を鎮圧せよ。』
そんな沙汰が政宗に下されたのだ。
当家が多大な犠牲を払って漸く手に入れた会津を、天下人の名の下にあっさりと掠め盗っていった男、蒲生氏郷。
上方出身で土地に不案内なのを良い事に、政宗は騙し騙し戦地へと誘導し、あわよくば討取ってやろうと密かに画策していたが、流石に智勇兼備と謳われる彼は、そう甘くはなかった。
次々と一揆勢の籠る城を落として行く蒲生軍。流れは確実に其方を向いている。
が、奥州の冬は甘くはなく―――。
不慣れな彼らは、雪に足を取られ動けなくなってしまった。
「叩きますか?蒲生軍の籠る名生城を。」
軍師の問い掛けに、政宗は渋い表情をする。
「……此処まで来たら、もう…。」
弓矢は向けられた。一揆勢へと。
―――一人でも多く、生かしてやりたい…。
主犯格を泣く泣く討取り、敗走する者達は追わなかった。伊達勢の手により、一揆は鎮圧された。

事は成ったのに、蒲生勢が出て来ない。
不審がる政宗の元に、一通の書状が届いた。
『伊達政宗の行動は不可解で、一揆に加担していた事は明らかだ。関わりがないと言うならば、証人を立てられよ。伊達成実を寄越さなければ、城から出ない。』
一揆扇動の証を手に入れたのだという。
「あいつか。」
裏切り者の名が刹那に脳裏を過ぎった。
日頃から不平を露わにしていたその男が、祐筆を使って偽の密書を仕立て上げ、蒲生の陣に持ち込んだ、との噂は耳にしていたからだ。
「それにしても、わざわざ仲介を通して要求して来るとは、臆病な事だ。天下に聞こえた智将も名折れだな。」
呆れ顔で呟いた政宗に、
「それだけ殿の狡猾さを見抜いているのでしょう。鋭い洞察力の持ち主ではありませんか。」
軍師は返す。
「小十郎、お前、本人を前にしてよくもそんな口が利けるよな。」
「おや、狡賢いのと怜悧なのは表裏一体、褒め言葉のつもりだったのですが…。」
気が置けない身内だからこそ、皮肉も言い合えるというもの。たとえ相手が従者であろうと、そんな関係で良いと思っている。
無意識に頬が緩んだが、手にした書面に視線を戻すと、政宗は再び顔つきを引き締めた。
「成実、か…。」
「公においても私においても、殿にとって欠いて最も影響の大きな存在、故の指名でしょうな。」
「……偽者を送るか?」
「それでは殿が臆病者と罵られましょう。大人しく、成実殿を出されるが得策かと。」
静かに瞼を下ろし、黙り込む。
最善の策を求めて彷徨い、やがて開かれた唇から零れたのは、
「怒るだろうなぁ、あいつ…。」
深い溜め息だった。

襖を開けると、待たされていた若者は粛々と頭を下げた。
「お待たせした。蒲生忠三郎氏郷だ。」
それを合図に、徐に面を上げる客人。瞳が合った瞬間、氏郷の背筋がぞくりと波立った。
「伊達藤五郎成実に御座います。」
それだけで人を射殺せるのではないかという程、強く鋭い眼差し。低く抑えた、心臓に響く声音。
自分より十二も年若い青年を前にして、迂闊にも『恐怖』という感情が込み上げてしまった。
奥州の名門の生まれとはいえ、所詮田舎の若輩に過ぎぬ、上方で生まれ育った自分とは雲泥の蛮人だと高を括っていたのに、所作といい、風采といい、上方に負けず劣らず風雅でいて、そのくせ戦を知る者の顔をした若武者。
―――これを政宗と引き離したは正解であったな…。
氏郷は固唾を呑んで、じっとりと汗ばんだ拳を強く握り締める。
―――戦陣では決して対峙したくない相手だ。
こめかみから首筋へと、冷たい汗が一筋、流れ落ちた。

「皆の準備は整ったか?そろそろ出立すると触れを出せ。」
身装を確認しつつ氏郷が告げると、
「それが…。」
側近は顔を顰める。
「如何した?はっきり致せ。」
主君の気の長くないのをよく知るはずの側近が、こんな態度を見せるとは珍しい。
「如何したというのだ?何か不都合でも起きたのか!?」
荒々しく発せられる声に、側近は畏れるというより呆れるという様相で項垂れる。
「いえ、はい。起きたというか、起きないというか…。」

―――ドスドスドス!!
城が崩れ落ちるのではないかという程、大仰な足音を立てて、目的の一室に辿り着くと、氏郷は遠慮なく乱暴に襖を開けっ広げた。
「伊達殿っ!」
襖の音と怒声にビクリと肩を跳ね上げて見上げる男が二人、しかし何れも呼ばれた名の主ではなく。
肝心の『伊達殿』は、屈み込む男達の間に敷かれた褥の上で丸くなり、穏やかな寝息を立てている。
「伊達殿、起きられよ!出立だ!!」
地に響くと寄えられる氏郷の通り良い声にも、全く無反応に眠り続ける成実。
ついに氏郷は額に青筋を立てて、褥の端を掴み、豪快に捲し上げた。寝ていた成実の痩躯はゴロゴロ転がり、床に放り出される。
「いい加減、起きやがれ!」
「と、殿!流石にやり過ぎでは…。」
「んぁ?」
漸く醒めたか、板間にちょこんと座って大欠伸をかますこの若者は、果たして昨日と同一人物なのだろうか?
実は夜中に別人と掏り替わったのではないか。
そんな馬鹿げた憶測が過ぎる程に、今我が前に在る夢現の無防備過ぎる猫は、あの鋭利な爪牙で威嚇して来た猛虎とは似て非なるものなのだ。
「伊達殿、出立する。早よう支度をされよ。」
努めて温度のない声で告げ、立ち去る氏郷の背後で、「ぅあーい」と気の抜けた返事が聴こえた。

その後、大衆の前に現れた成実は、初めに目通りした時と同じく、キリリと引き締まった若武者に化けていた。
―――政宗と同じ血を引くだけあって、聡いのか、それとも単なる虚けなのか…。
田舎者と侮っていたはずの相手に、この五日の内に、うっかり興味をそそられている。そんな自身に気づいて、氏郷は自嘲気味に鼻で笑った。
と、不意に視界に飛び込んで来る、今しがた脳裏を占めていた人物。誰もいない白一色の屋根の上から、ぼんやりと城下を眺めているのか。
「如何なされた、伊達殿?」
声を掛けると、振り返った表情は思いの外柔らかく。
「懐かしいな、と…。此処は我等の生まれ育った城なれば。」
休憩にと偶然立ち寄った大森城。賜ったばかりの奥州事情に暗い氏郷は何も知らずに入ったが、そうか、此処は彼のかつての居城であったか。
釣られて、氏郷も表情を和らげる。
「伊達殿は大森の御出身か。それは懐かしかろうな。儂も日野に帰れば、きっと同じ想いがするだろう。」
腰高の窓枠を跨ぎ、屋根に出ると、雪の積もった其処は、足元から急激に身を冷やす。
「寒くないのか?そんな処に座っていると、腹をやられるぞ。」
己の周りだけ軽く雪を掻いてあるとはいえ、こんな冷たい場所によく座れるな、と小さく震えながら半ば呆れ気味に尋ねると、
「我等は雪の中で育っております故、上方衆よりは寒さに強いかと。」
真冬に咲く緋寒桜の如く、嫌みのない晴れ顔で。
「近江にも雪は降ったが、これ程に閉ざされる様な雪は見た事がない。これでは冬場何も出来ぬ。そなたはもっと温暖で…中央に近い土地に移りたいと思うた事はないのか?」
「ない。」
あまりにも簡潔な即答。
「中央から遠くてこそ、奥州には土地に根づいた歴史と文化があります。たとえ天下人が大軍を以て攻め入ろうとも、精神(こころ)だけは譲らない。都の傍にあらずとも、我等は生きられる。」
如何やら、この青年は、人の心を見透かす力を備えているらしい。
上方こそ全てに優れ、其処にあってこそ武士の誉れと考えていた。
天下人の下に属すると雖も、いつかこの手でその地位を奪い取り、自分が日の本を統べるのだと、若き日より信じて来た。自他共に認める麒麟児と呼ばれた我こそ、その地位に相応しいのだと。
しかし、ひた隠しにして来たその野望は、あっけなく打ち砕かれた。いくら大幅な加増があろうとも、大身の大名になろうとも、こんな田舎に追い遣られては……。
転封を告げられたあの日から、心には常に暗雲が立ち込めている。
天下への道を断たれた絶望感。
そんな氏郷の心情を知る由もない、出会って五日の若者は、平然と言う。
「我等は生きられる。」
と。
その言葉に、つい己らしからぬ事を口にした。
「そなたは、この奥州にあっても、天下を取れると思うか?」
すると彼は真顔で、
「我等にはその気はない。だが、我が殿はいつか天下を取ると信じております。」
力強く断言したその瞳には、希望という曖昧なものではなく、確信の光が宿っている。
―――面白い者に会うた。
胸の奥の暗雲が動き出し、切れ間から僅かに陽が射して来た。
―――まさか、こんな若造に救われるとはな。
諦めるのは早計であったやも知れぬ。零した溜め息、一つ。
「さぁ、立たれよ伊達殿。そろそろ出発だ。」
結局冷えた瓦に座れず、立ち話をしていた氏郷に続いて、成実も窓枠を越える。
階段の手前でつと立ち止まり、振り向き様、氏郷が唐突に脇差を鞘ごと抜いた。
「これを差し上げよう。」
訳が判らず、成実はただ、きょとんとするばかり。
「御勤め御苦労であった。そなたは此処から主君の元へ帰られよ。」
「二本松までお供致しますが…?」
「いや、良い。そなた等の心意気は判った。これ以上そなたを引き連れて進めば、儂は恥ずかしゅうて、在所へ戻れぬ。此処でお別れだ。」
何か吹っ切れた様に面容を綻ばせる氏郷から、上方の鍛冶師の手に依る見事な脇差を恭しく受け取る。
「我が殿は、蒲生殿と天下を争うのか。」
二人の間を擦り抜ける風は、冷たくも清々しいものだった―――。

後日、蒲生氏郷から関白の手に渡っていた書状が一揆扇動の証とされ、政宗は弁明の為に上洛する事となったが、彼の並々ならぬ度胸と知恵、そして、書状を提出した氏郷自身が
「偽の密書に踊らされた。伊達殿は一揆勢とは関わりなかった。」
と謝罪した事に因り、伊達家はまたしても、改易の危機を免れた。
主からの消息を、留守居を任された米沢で受け取った成実は、物珍しい装飾の施された脇差に一礼して、満足気に微笑んだ―――。
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自己紹介:
伊達成実・伊達綱宗・大崎義宣をこよなく愛する京都人です。

ご連絡は以下の3つの方法にて承っております。
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