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伊達好きねこたの歴史関連や創作物についての呟き処+創作小説置き場(もちろんフィクション)です。
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2024.05.04Saturday
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「お嫁に行くんだもの!」
2021.08.07Saturday
実元+鏡清院(澪)+晴宗+輝宗(彦太郎)+親隆

2010年6月4日、成実の命日記念SS。
命日記念なのに、成実は登場しません。
成実が生まれるにはなくてはならない、両親のお話です。

親隆さんは果たしていくつまで伊達家にいたんだろうか??
生年がはっきりしてないけど、次女が7つの時、うちでは輝宗さん(彦太郎)は10歳。その頃親隆さんは、おそらく18前後?
もういない気がするよ~…と何度も思いながら、どうしても出したかったので、いてもらいました(●∀´;)しかも多分名前が違う。

実元さんは嫁に影響されて、性格がどんどん丸く、尚且つ豪快に、なっていきますよ~♪
家主は、晴宗・実元兄弟のよそよそしい感じが大好物です!
晴宗→実元:罪悪感、仲直りしたい。
実元→晴宗:縁談を潰された、嫌い。
家主ビジョンでは、その前後の伊達当主陣の中で最も人間的にまともなはずの晴宗さんなのに(親馬鹿入ってますが…)、弟2人(次男・三男)にたいそう嫌われてしまって、残念な感じ。
お兄ちゃんは、兄弟みんなと仲良くしたいのに!


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月見の歌会をやるから是非参加するように。
兄からそんな手紙が届いた。
あまり気は乗らなかったが、規模の大きな父子喧嘩とも言える長い戦が、父が兄へ家督を譲る事で終結を見た今、当主の呼び出しをすっぽかす訳にもいかず、伊達実元は渋々米沢を訪れた。
空は薄曇りで、果たして今宵月が出るのか危うい中、予定より早い到着だ。真っ直ぐ挨拶に向かうのも癪だったので、一人庭をぶらついていると、耳に届いた子供の声。
「あー、兄上ズルイ!!澪の分も採って!」
「ズルくない。欲しけりゃ自分で採れ。」
「こら、彦太。澪にも採ってやれよ。」
「もういいもん!自分で採るもん!!」
木の枝に陣取って柿の実を貪る次兄と、それを見上げて実をせがむ妹、諌める長兄。
此処の兄弟はいつ見ても喧嘩をしているな―――。
思い返して、つい噴き出してしまった。六つの瞳が一斉に此方に集まる。
「叔父上、お久しぶりです。」
たたたと駆け寄って来た長男は相変わらず礼儀正しいが、次男は軽く会釈すると視線を逸らしてまた果実に食らいつき、妹はついに幹に手を掛け柿の木に登り始めてしまった。
「おい、澪、危ないぞ。柿なら儂が採ってやるから、大人しく待っておれ。」
叔父の呼び掛けにも、
「御心配は無用です。木登りくらい出来ますわ。兄上には負けないもの。」
ぷぅと頬を膨らまし、突っ撥ねる。
やがて幼い妹は一番低い枝に辿り着くと、裾の肌蹴るのもお構いなしに、手近な実をもぎって豪快にかぶりついた。
「まったく…。」
「これでは嫁の貰い手も無いなぁ。」
実元の溜め息に別の誰かのものが重なった。確認するまでもなく正体はわかっていたが、振り向くと、其処にいたのはやはり予想通りの人物―――兄弟の父であり我が兄、伊達家十五世・晴宗だ。
見つかってしまったか…。
ガックリと肩を落とした実元だったが、兄は特に無礼を咎める事もなく、脇をすり抜け、娘の方へと歩み寄った。彼は生来穏やかな性格であり、家中を巻き込んであの様な事件を起こした事の方が意想外で、あれは本当にこの兄の仕業だったのか、未だ信じ難い。
「澪。もう少し淑やかに出来んか?」
唇に果実の繊維を貼りつけ、種を吐き出す娘に向かって、眉をへの字に歪めて見せる父。
「その様な蓮っ葉では、父はお前の将来が不安で仕方ないぞ。」
「大丈夫です、父上。だって澪は…。」
言葉を中途に収めた娘は、目を疑う行動に出た。枝から手を離し、幹を蹴って―――実元の懐へと飛び込んで来たのだ。
いくら小さく軽い子供とはいえ、勢いで尻餅をついてしまったが、如何にか姫は腕の中にしっかと確保する事が出来た。
が。
安堵する実元の脳天に、更なる衝撃が振り下ろされた。
「澪は叔父上の処にお嫁に行くんだもの!」
「え゛っ!?」
遠景の山に突如落ちた雷を背に、晴宗・実元兄弟は、共にあんぐりと口を開けたまま、石像の如く固まってしまったのだった。

昼過ぎに降り出した雨は暫く後に止んだものの、夕刻になっても未だ空にはどんよりと厚い雲が立ち込めている。
「実元、お前、いつの間に…。」
しんと静まり返った晴宗の居間には、不穏な空気が漂っていた。
「知りませんよ。むしろ此方が伺いたい。」
妙な濡れ衣を着せられては洒落にならない。冷静な口調ながら、キッパリと反論する実元。
「まぁ、お前になら嫁に出しても良いかなぁ?」
「考え直してください。歳が離れ過ぎて、すぐに未亡人になってしまいますよ。」
「お前の処に嫁にやるなら、いつでも会えるしなぁ。」
「それが本音ですか…。」
無意識に漏れる大きな溜め息。
兄は人間嫌いの自分とは違い、子供好きで、進んで子守りもするし、昔から弟妹達の面倒もよく見る人だった。だからと言って、可愛い娘を他家に出したくないから弟に嫁がせようとは、流石に度が過ぎるのではないか。
「よし!善は急げだ。早速婚礼の準備を…。」
「『よし!』じゃない!!兄上、あと十年!いや、せめてあと五年、お待ちください。澪は未だ七つですよ。いくらなんでも気が早過ぎます。」
すっかり己の世界に旅立っている兄に、つい声を荒げてしまった。しかし、そのお蔭で、漸く彼は現実へと戻って来た様だ。
「五年か……。うむ、わかった。澪が十二になったら大森へ送ろう。」
だから、何故、そう急くのだ―――。
実元はこめかみに手を当てて、腹の底から深い溜め息を吐いた。

「澪が舟の前を行く。」
「ん?」
酒膳を添えた陽溜まりの縁側に寄り添いながら、ふいに幼びた妻が呟いた。
「父がよく言うのです。舟の後を追う澪の様に、殿方の後ろにピタリとついて歩く様な気立ての良い娘になる様にこの名をつけたのに、お前はまるで澪が舟の前を行く様だと。」
ぷぅと頬を膨らます様は、五年前と少しも変わらず、つい子供扱いしてしまう。
「澪が舟の前を、ねぇ…。良いではないか、常と違った澪があっても。」
「…叔父上。」
「いつも後ろにあっては、姿が見えぬわ。」
盃をくっと煽った刹那、実元の肩に心地好い重みが掛かり、鎖骨に流れ来る髪の感触がこそばゆい。
「やはり叔父上に嫁いで良かった…。」
満足気に囁いた澪に、そういえば、と尋ねる。
「何故儂を選んだのだ?」
すると妻は肩に頭を乗せたまま、首を捻って、上目遣いににっこりと笑い、
「父上がいつも叔父上と仲直りしたいと申しておりましたので、澪が叔父上に嫁げば、きっと蟠りも消えるかと思うたのです。
 でも今は……このじゃじゃ馬を認めてくださるのは叔父上だけと思うております。」
おぼこ娘にそんな心配を掛けてしまうなど、大人失格だな―――。
盃に自嘲的な笑みが浮かんだ。
幼い頃から人づきあいは得意な方ではなかった。兄が内乱を起こしたあの日から、それに輪を掛けて人が嫌いになった。
もう誰も信じない。家族も友人も何も要らない。心許せるものなど、何もない。
そう思っていたのに。
二十も若い娘子に揺るがされようとは、全く大人失格だ。

だがそれも悪くない―――。
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