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伊達好きねこたの歴史関連や創作物についての呟き処+創作小説置き場(もちろんフィクション)です。
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『にすい』に『うま』 ある意味『天使』が舞い降りた
2021.08.07Saturday
長いシリーズ名の第一作。というか…現状1本しかありません。
大膳様がまた舞い降りてくれたら、ちゃんとシリーズとして書きたいな。


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「遠藤様、一大事です!」
慌てふためき駆け込んで来たのは、かつて自分が主に推挙し、今ではその主の嫡男の傅役を任されている弟子の様な存在、片倉小十郎景綱だった。
「一大事?お前は心配性だからな。何時でも何処でも一大事であろう。して、如何した?」
宥める様にゆったりと問い掛けると、
「若様に得体の知れぬ物が憑いて御座います。」
蒼白の面で返された。

小十郎に連れられて遠藤基信が庭に出ると、池の畔に二人の少年が佇んでいた。一人は話に聞く物の怪憑きの若君・藤次郎政宗、もう一人は彼の一つ年少の従弟・藤五郎成実だ。
「御覧下さい。若様の周りに何やら怪しげな白い影が見えまする。遠藤様でしたら、あれの正体がお判りになりますか?」
かつて神職の倅でありながらその素質が無いと烙印を押された小十郎は、各地を行脚した僧の子であり、自身人間離れした感性の持ち主である基信に、日頃から過度の期待を寄せる節があるが、今度ばかりは如何やら本格的にこの血流の出番である様だ。
若君の肩には見知らぬ男の霊が取り憑いていた。
「失礼しますよ。」
二人の少年の間に分け入り、半透明の男と視線を合わせると、基信はいつもと変わらぬ穏やかな口調で声を掛ける。
「私は米沢城主・伊達輝宗に仕えております遠藤基信と申しますが、貴方はどちら様でしょうか?」
すると男はパッと表情を明るくし、霊らしからぬ弾んだ声で、
「おおっ!ついに儂の姿が見えるものが現れおったか。儂は伊達九世・政宗じゃ。この藤次郎の祖先じゃな。」
伊達中興の祖と謳われる九代当主・大膳大夫政宗。血縁で無くとも、家中にあれば誰でも知っている名だ。
常人であれば俄かに信じ難い事かも知れない。しかし、幼い頃より常々あるはずのない存在を意識して育った基信には、今更驚く様な事ではなく、むしろ実体が無くとも十分に備わっている品格、立ち昇る只者ではない気色に、納得せざるを得ない状況であった。
「これはこれは、失礼を。して、大膳様が何故(なにゆえ)に?」
「次郎のへなちょこぶりが許せぬのだと!」
脇から口を挿んだのは、無遠慮な従弟で。
「次郎は意気地がないからな。」
悪気がないだけに厄介な屈託のない笑顔。
「この童(わっぱ)、斯様な小なる池も越えられぬと申す。儂の名を受け継いだ次期当主ともあろう者がこれでは、情けのうて、おちおち眠れぬわ!」
大膳大夫の言葉に藤次郎は眉根を寄せたが、開きかけた唇は言葉を紡ぐ事なく、諦めた様に固く結ばれた。
思う処があったのは間違いなかろうが、彼は如何にも自分の気持ちを口に出すのが苦手な模様。その性格に不安を抱く家中には、当主に相応しくないのではないか、と密かに談ずる者もいる。
「俺は跳べるぞ。」
あっさりと水面(みなも)を跳び越えるこの従弟程の活発さがあれば、或いは廃嫡の二字など誰も浮かびはしなかったかもしれない。
「儂が心血注いで、童の根性叩き直してくれるわ!」
「大膳様には血はなかろ?」
「五郎は阿呆じゃのう…。何も文字通り心と血を注ぐ訳ではない。この政宗の全精力を懸けて、という意味じゃ。」
「じゃあ俺も手伝う!次郎の事はよく知っておるぞ。」
「そうかそうか。なら五郎を頼りにするとしよう。儂は肉体(からだ)がのうて、不便だでな。」
見当違いな宙に向かって話している処を見ると、如何やら藤五郎には大膳大夫の姿は見えていない様であるが、人懐こい彼の特性か、すっかり打ち解けてしまっている。
「では、後の事は大膳様にお任せして、年寄りは引き下がるとしますかな?」
「おお、任せておけ!」
「ええっ!?」
基信が踵を返すと、慌てて袖に縋りつく小十郎。
「除霊して頂けないのですか!?」
「何を申すか?大膳様は伊達家の偉大なる御先祖でいらっしゃる。失礼な事を申すでない。これを機に、お前も心眼を養うが良い。」
小十郎の肩を強く打つと、基信はニコニコしながら去って行った。

こうして、幽霊による奇妙な『儲君育成計画』は始まったのである―――。
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