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伊達好きねこたの歴史関連や創作物についての呟き処+創作小説置き場(もちろんフィクション)です。
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2024.05.18Saturday
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隻腕の天狗5 月に願う
2021.08.07Saturday
大崎義宣・伊達実元兄弟の、旅立ち前の最後の夜。
実元さんの兜の前立てが三日月な理由。
を、捏造(笑)

義宣は、常々、儚い雰囲気がつき纏ってしまいます。
だから好きなのかな、私?(切ないもの好き)
彼の不運は、生前のあれこれも勿論ですが、この現代において、戦国流行りな時でさえも、こうまでアウトオブ眼中な事だと思う。
哀し過ぎる!!


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濃紺の羅紗の中心で煌々と輝く月は、夜空を支配しているかの様で、思惑通り周辺諸国を次々と旗下に入れる政略家の父はそれに似ている、といつか思った事がある。
今宵の三日月は、例えるならその牙か、もしくは爪か、そう考えると、風流の象徴であるはずの月が、随分と禍々しく感じられるものだ。

喧しい宴の席を抜け出して、一人酒を喫する濡れ縁へ、客が訪れた。
「お前は本当に人の輪を嫌うなぁ。」
それが一つ年長の兄だと判ると、僅かに波立った胸はすぐに凪いだ。
「あんな喧噪の中で飲んでは、酒が不味くなる。何が楽しいのか理解出来ぬ。」
「まぁ、それは同感だな。」
隣に腰を下ろした小僧丸の右手には空の盃。
「注(つ)いでくれ。」
差し出されたそれへ、弟は作法も何も無く、溢れるのもお構いなしにドボドボと酒を注(そそ)ぐ。
「おいっ!時宗丸!限度を知れ、限度をっ!!」
慌てて盃を煽る兄を見据える弟がほんの少し綻んだ、と感じられたのは小僧丸だから。
弟は無口で無表情で、皆口を揃えて『時宗丸は腹が読めぬ』と言うが、自身だけはそんな弟と通じ合えているという自負がある。
沢山の兄弟姉妹の中で、唯一人心を許せる相手。そのかけがえのない相棒とも、もうお別れだ。
小僧丸は明日、家を出る。父の戦略の一つとして、大崎家を継ぐ為に。
「今宵の月は細いな。まるで空が笑っている様だ。」
随分と空想的な事を言うな、と思ったが、言われてみればそう見えなくもない。
「小僧丸は月が好きか?」
「ああ好きだ。どんなに姿を変えても美しく輝いて、朔の日でさえ人々は焦がれている。あれ程に愛される存在が他にあるか?私は月が羨ましい。」
天を仰ぐ兄の横顔には、この先への不安が滲んでいた。
そもそもの約定とはいえ、大崎家が快く彼を受け入れるとは思えない。温かい家庭、平穏な日々など望めるはずはない。果たして当主として家中を纏め上げる事が出来るのか。
そんな想いに苛まれているのだろう。

幼い頃から、彼は劣等感を抱いていた。優れた兄弟達の中で、自分には何の取柄もないのだと。
「兄上が好きになれぬ。頭が良くて、優しくて、誰からも好かれる兄上に嫉妬しているのだと思う。私は醜い…。」
項垂れる小僧丸の呟きに、
「醜い己を認められるのは強さだ。」
そう説くと、
「時宗丸は優しいな。」
乾いた笑みを浮かべた。
「いつか日の本が一つとなって、皆があの空の様な表情(かお)でいられる日が来ると良い。
 そうしたらまたこんな風に、月明かりの下、お前と盃を交わしたいな。」

去り行く相棒の願いを乗せた三日月を、時宗丸は自身の兜に掲げ、戦場(いくさば)にその姿と名を知らしめたのだった―――。
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