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伊達好きねこたの歴史関連や創作物についての呟き処+創作小説置き場(もちろんフィクション)です。
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2024.05.18Saturday
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隻腕の天狗3 愛しい子、優しい子
2021.08.07Saturday
城持ちの実元さんが自ら、小僧丸の身の周りのお世話をする。
果たして、坊っちゃん育ちの実元さんに、どれだけの事が出来るんだろう?
いや、それ以上に、同じく坊っちゃん育ちの小僧丸が、よく独り暮らしなんて出来たもんです…。

『記憶の彼方に』の回想シーン直後、くらいの出来事です。
小僧丸は、またちっさい方の時宗丸に会いたい。
だって日頃おっさん(弟)としか会っていないから~(●∀´;)

家主は、小僧丸と梅香姫は馴れ初めはどうあれ、仲良しさんだと良いと思っております。
当時の女性は強い、心が。


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「お前の子に会うたぞ、時宗丸。」
開口一番、兄が告げた。
「お前と違って、明るくて口の達者な男子(おのこ)よな。」
「…あれは母親似なのだ。」
なんだか照れ臭くなり、実元は瞳を逸らして、持参した焼き鮎の束を兄の胸に押しつけた。

二十年程前から、この鳥渡の山に身を潜める一つ年長の兄、小僧丸。
かつては一国の主であった彼だが、家人に命を狙われ、殺されたとして難を逃れ、今では実元以外の人間には姿を見せぬ様、文字通りの隠居生活を送っている。
実元は二、三日おきに兄の元を訪れる。家人に悟られぬよう気を遣いながらも、外界の時勢を知り得ぬ兄の話相手として、また、右腕を失った彼の不便を助ける為に、だ。
生まれて間もない頃、一度だけ我が子を連れて来た事がある。
子を成さぬまま妻を亡くした彼は、己の指を力強く握る小さな紅葉に随分と興味を持っていた。
沢山いた弟妹達とは少しも遊ぼうとはしなかったのに、歳を重ねると人は変わるものなのか。
尤も、兄にも増して人嫌いだった自分が、今や妻と競って我が子を可愛がっているのだから、大きな顔は出来ないが―――。

「まさかお前が、子に自分の名をつけようとはなぁ。」
ニヤリと意地悪く笑う小僧丸。
「……山に入るなと常々言いつけておるのに…。」
「良いではないか。優しい子だったぞ。独りで寂しかろうて、城へ招いてくれた。」
「そんな事を…。」
誰もいない森の中で、たった一人長い時間を過ごさねばならぬ兄が、寂しくないとは思っていない。
が、小僧丸の存在が万一外に漏れる事があれば、彼も自分も大森も、事の次第によっては伊達家そのものまでも、全てが終わる。幼い我が子に重過ぎる秘密を背負わせるのは心苦しいのだ。
「もう少し大きくなったら、また連れて来るか?」
「大きくなるまで、私は生きているだろうか?」
「馬鹿を言うな。あれだけの深手を負って生き延びたんだ、あと百年は生きるわ。」
「本当に生きたら、化け物だな…。」

以来、小僧丸は実元が訪ねる度、責つく様に小さい時宗丸の事を聞いた。生意気で優しい若君が、余程お気に召したらしい。
支えてくれた近侍達を死なせて、自分だけが助かった事を責め続けた兄が、二十年も経って漸く自身を許し始めている。
―――時宗丸がもう少し大きくなったら。
実元は近い未来に期待を寄せつつ、伸び過ぎた兄の髪を切ってやった。
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