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伊達好きねこたの歴史関連や創作物についての呟き処+創作小説置き場(もちろんフィクション)です。
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2024.05.18Saturday
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「忘れないでください。」
2021.05.29Saturday
政宗+成実+摩海+仏性院+岩城常隆+その他の人々

成実が仏性院(岩城御前)を継室に迎える話。
玄松院の死後、長い間独り身だった成実が、何故仏性院を継室に迎える事にしたのか、てな内容です。
成実&摩海、成実&常隆兄さん、という家主の大好きコンビを詰め込んだ一作vV(●∀´*)

2013年5月に発行された伊達成実アンソロジー『余るも夢の』(第一弾)に掲載させて頂いた小噺を、サイト仕様に少し手直ししたものです。
(内容は変わっておりません。)
お陰様で大好評につき、増刷分も含めて完売したとの事ですので、自家作品を転載します。

家主の中で、岩城親隆・常隆父子は、スイスみたいな人=中立の人です。
勿論、戦国時代なので、他国と対立したり争ったりもしてますが、よく和議の仲介してるし、なんとなく自ら挙兵っていうタイプじゃないと思うんですよね。
親隆→実元の手紙の件もあるし。
そんで、成実が岩城を訪ねた事がある様なので、これは仲良いんじゃね?の結果、こんな話になりました。

常隆兄さんすきー。
兄さんとか言って、殿と同い歳だったけど、すきー。

狙った訳じゃないけど、アンソロ第二弾はこの続きみたいな話になったよー…。

ザネたんが玄松院の事笑ってるのは、決して馬鹿にしてる訳ではなく、お互い包み隠さず素でつきあえる間柄だった、という事です。
摩海ちゃんて、実際どんな風に育ったんだろう…?
そして、他の朝鮮人の子達は、どうなったんだろう……?


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岩城の後室を後添えに迎えたい。
そう告げると、主君・伊達政宗は瞳をまんまるくして驚いた。
「珍しいじゃないか。
 玄松院を亡くしてから幾度となく再婚を勧めて来たが…どんな器量好しでも、家格のある姫でも、悉く断って来たお前が、自らそんな話を持ち出して来るとは思わなんだ。
 如何した?何か心変わりがあったか?」
興味津々の態(てい)で、ずずいと顔を近づける主君に、
「放っておくと、誰彼構わず手を出す何処ぞの輩の餌食になりそうだからな。」
と真顔で答えると、
「無礼者め。時じゃなければ首が飛ぶぞ。」
「梵の事だとは誰も言ってない。」
「眼が言ってる。」
政宗は苦虫を噛み潰した様な表情(かお)で、従弟の額を小突いた。

梵天丸。
時宗丸。
そう名乗っていた幼き日から、傍近くで共に育った二人には、主従と言えど遠慮がない。公の場であれば体裁も気にするが、身内の集まりならば呼び慣れた幼名でお互いを呼ぶ。
主君が許しているのだからと、誰も咎める事もなく、うんと年長の譜代の家臣達はそんな二人を微笑ましく眺めていた。

「御継室を迎えられるのですか?」
ぼんやりと秋風を感じていた縁側に、小姓がコトリと湯呑みを置いた。
「ああ、そのつもりだよ。」
「そう、ですか……。」
「…如何した摩海?気に食わないか?」
「いいえ、滅相もない!
 ただ…殿はずっと、玄松院様だけを大切になさるものと…思うておりました。」
俯いて黙する小姓。出会った頃を思い出す。
「日本語、上手くなったな。」
「十年…経ちます。殿にも、家中の皆様にも、沢山の事を教えて頂きました。玄松院様には、紙細工を…。」
十年前、海の向こうの大陸へ進軍した。
その時、配下の者が誤って殺めてしまった行商人には七つばかりの子供がいて―――諫言の絶えぬ中、放置出来ずに連れ帰った。
言葉も通じない異国で、親を殺した者の仲間に育てられる事が幸せだろうか。
たとえ知人がなかろうとも、せめて同族の中にいる方が、救われるのではなかろうか。
繰り返し自問自答しながらも、置き去りには出来なかった。都合の良い自己満足かもしれないが。
我が子と歳近い異国の少年を、妻・十波は、もう一人子供が出来たみたいだと、喜んで迎え入れた。人見知りなわりに、子供は好きだったらしい。或いは、夫の気持ちを汲んでの強がりだったか。
今となっては、知る由もないが―――。
「俺も鶴の折り方を習ったよ。羽根が歪んでいるとか、首の向きがおかしいとか、叱られてばかりだったな。
 縫い物や綾取りも好きで、手先の器用な女子(おなご)だった。
 字は下手だったけどな。」
ハハハと声を立てると、顔を上げた小姓の瞳には、うっすらと涙が滲んでいて、
「如何しても、御継室を迎えられるのですか?」
先刻と同じ台詞を繰り返す彼にとって、我が子同然に愛情を注いだ亡き妻は、きっと母親なのだろう。実の母を物心つく前に亡くしたというから、尚更か。
「判っております。殿には跡継ぎが必要だという事は。奥方がいらっしゃらなければ…。」
「そういう事じゃないんだ、摩海。
 気持ちは変わらないから。何十年経とうとも、十波はずっと俺にとって唯一人の存在だからな。」
頭を抱き寄せると、小姓は父に縋る様に、主君の懐で泣いた。

「輝宗公はまた兵を出されるって?」
樹の根元に腰を下ろして、はふーと溜め息混じりに岩城常隆が漏らす。
「実元叔父でも止められないかぁ。」
「父上も大変なんだよ。―――常兄(にい)、食う?」
見上げると、枝の上から従弟が柿の実を差し出していた。
「相変わらず食いしん坊だな、成実は。良いのか、こんな処でのんびりしてて。一応、伊達の若様の小姓だろ?」
「良いの。今回は正式なお遣いだから。
 常兄こそ…岩城の当主だろ?会談の場にいないとまずいんじゃないの?俺は父上のオマケだけどさ。
 此処の柿、美味い?」
「当主なんて名ばかりだからな。父が退いて以来、実質、動かしてるのは伯父上さ。
 美味いよ。二階堂の姫もお気に召した様だ。」
「奥方が?じゃあ信じよう。常兄は何でも美味いって言いそうだしな。」
「何だよ、それ。」
眉根を寄せる従兄を尻目に、自分の分の柿をもぎ取り、ふわりと着地するなり、豪快にがぶりと一口。
「うん、美味い!」
成実は幸せそうに咀嚼する。
「いつか戦が終わる時は来るんだろうか?」
丘の上から見下ろした先には、黄金(こがね)の頭(こうべ)を垂れる稲穂が広がっていて、百姓達が慌ただしくも楽しげに収穫に追われている。今年は豊作の様だ。
「たった一日の戦で、あの全てが台無しになってしまう…。皆、この日の為に汗水流して頑張って来たのに……。」
寂しげな眼差しで田畑を見据える従兄の横顔に、成実は、いつも傍にいる別の従兄の姿を重ね合わせた。
「岩城とは争いたくないな。常兄と争う理由なんてないよ。」
「政宗殿が田村の姫を正室に迎えたと、家中が殺気立ってる。うちは田村とは対立して来たから。」
「一緒に柿食ってりゃ、そんな事どうでも良くなるのにな。」
「この世の全ての人間が成実だったら良いと思う。」
「気持ち悪いよ。」
「平和だろうよ。」
穏やかな陽射しの下、二人は並んで甘い柿を貪った。

岩城常隆は成実にとって、父の兄の孫であり、母の兄の息子である。
性格は控えめながら、当意即妙の切れ者で、一歳違いとは思えぬ大人な従兄の事が、成実はとても好きだった。滅多に会えぬ故に多少美化されていたかもしれないが。
年上であるにも拘らず、手の掛かる弟感覚の政宗には、無意識に兄貴風を吹かせてしまう成実だが、常隆には実の兄の如くつい甘えてしまったものだ。
しかし常隆は、我が子の誕生を目前に、その顔を見る事なく、若くしてこの世を去ってしまった。そして、残された夫人は、生まれて間もない嫡男と共に家を追われ、行方知れずに―――。
『妻と子を守って欲しい。』
己の死後を予見した病床の従兄から届けられた最期の手紙。力ない文字に譲れない願いを託して。
成実は、従兄の遺志を継ぐべく奔走したが、身を隠した二人を見つける事は出来なかった。
何処かで新たな幸せを掴んでいてくれれば―――そう願い、手を引いた数年後、仙台からの報せに耳を疑った。
『岩城常隆の後室と遺児が現れた。』

「岩城の遺児に、伊達姓と『政』の一字を授ける。」
かつて弓矢を交えた岩城の子息を、政宗は意外にも喜んで受け入れた。仙台に仕え、父の名に恥じぬ働きが出来る年頃になるのを待っていたという息子は、もうすっかり立派な青年だ。
「俺は夫人と赤子が岩城を追放されたと聞いた時から、二人を迎えるつもりでいたぞ。」
極内輪の会食の場で、当主は鼻高々。
「ホントかよ?」
「後からなら、如何とでも言えますな。」
「お前等、それでも家臣かよ!?」
和気藹々と箸が進み、膳が空く。ふと場が落ち着いた処で、成実は静かに切り出した。
「岩城の後室を後添えに迎えたい。」
と。

いざ顔を合わせてみると、彼女は年齢よりも少し年嵩に見えた。
若き日に見えた事はなかったが、確か常隆より三つ程年下と聞いていただろうか。
二十年弱、夫を亡くし、実家を頼る事も出来ず、たった一人で我が子を育てて来た苦労が、表情(かお)にも指先にも刻み込まれて―――長い睫毛に縁取られた深い色の瞳は、芯の強さを物語っている。
互いの呼吸を計る様に只向かい合って座したまま、どれ程の時が過ぎただろうか。庭の鹿威しがカコンと幾度目かの声を上げたのを合図に、成実が沈黙を破った。
「常隆の事を忘れないでください。」
「え…?」
見開いた瞳にも、薄い唇にも、浮かぶのは驚愕の色。
「今、何と…?」
「この成実に嫁がれても、政隆の母であり、岩城常隆の妻であってください。」
生前、夫に聞かされた事がある。一つ年少の従弟の話を。
能有る鷹は爪を隠すとは成実の為にある様な言葉だ。
他家には在るが、誰よりも信頼出来る。
大切な物は成実に託したい。
温和な彼が珍しく熱く語っていたっけ。
仙台を訪ねると決めた時、伊達成実という人に会ってみたいと思った。まさか、継室に迎えられようとは、予想だにしなかったが。
「岩城御前。」
その温かな声に、今度こそと、もう何年も抱く事のなかった想いに胸が躍るのだった―――。
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