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伊達好きねこたの歴史関連や創作物についての呟き処+創作小説置き場(もちろんフィクション)です。
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2024.05.18Saturday
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「武士に二言は無いからな。」
2021.06.04Friday
成実+十波+実元+長松丸(亘理定宗)+その他の人々

2013年命日記念。

同日命日の二人が結婚します!な話。
十波の弟・定宗君初登場ですが、殆ど出番はありません…。
父・重宗、祖父・元宗に至っては、出番すらありません……あかんがな。
十波は超箱入り娘。パパからも溺愛、侍女からも溺愛、そんな根っからのお姫様であれば良いと思っております。

長年の片想いが実った十波。
妹から女性へと見方が変わる成実。
この若夫婦が、本当に大好きです。

長松君は姉と仲良しさんで、ザネたんとも仲良しさんだと良いな。
ちょこちょこ顔を合わせては、十波の話で盛り上がる、みたいな。戦陣で(笑)

微妙に政宗さんへ当てつけがましい感で申し訳ない。
ザネたんは側室は持たなかったと信じて止まない家主です。
側室しか持たなかった人も、それはそれで良いけど♪


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「そろそろお前の嫁探しを始めねばな。」
父が俄かに呟いた。
「いくつか推薦状が届いておるが…成実に相応しい姫はおるかの?」
この中から選べとばかりに差し出された書状達は予想外に厚く、姫の将来を案じる親心がひしひしと伝わって来るのだが、一応手に取ってはみたものの、開く気にはなれず、成実は静かにそれらを元に戻した。
「父上。」
「うん?」
「成実には既に心に決めた姫がおります。」
「そうか。」
「はい。」
「…………んん?なんと!?」
普段何事も知り尽くしたかの様に何処か余裕を見せる父の珍しい吃驚の表情に、息子はしたり顔を堪えて、言葉を繋ぐ。
「嫁に迎えると契った姫がおりますので、他の姫達はお断りしたく。」
一夫一婦の仲睦まじい両親を見て育った自身には、側室を取る気はない。そう訴える真っ直ぐな瞳に、知らず知らずに大人になっていた息子の成長を感じ取り、
「…そうか。そうか、そうか!」
いつになく愉しげに慌てて硯を用意すると、父は真っ新な紙に筆を走らせた。

ポカポカと心地好い陽射しに包まれた亘理城の縁側では、干菓子を摘まみながらの、女子(おなご)達の小さな評定が執り行われている。
「大森の成実様が御正室をお探しだとか。」
「それならば我等が姫様で決まりですわ。これ程に可愛らしい姫君は何処にもおられますまい。姫様、御父上様に御手紙を書いて頂かねば。」
「姫様。今こそ一生の内に一番の気合を示す時ですわ。他の姫君達を蹴落とす覚悟で掛かりましょうぞ!」
戦宛らに燃え上る侍女達を尻目に、肝心の姫は静かに心に愛しい顔を想い描く。
幼い頃に差し出してくれた右手の温もりは、今も鮮明に覚えている。この想いは、長い間そっと胸の奥に温めて来た。
―――暫く会っていない。
―――すっかり大人になられているはず…。
白い歯を覗かせたあの無邪気な笑顔、調子は強いが棘の無い声、その存在をいつも傍に感じていられたら、それだけで幸せだ。側室でも良い、ただ傍にいられたら―――。
周囲の声を遠くに聞いていると、ふと円陣の外から声が掛かった。
「姫様。殿がお呼びで御座いますよ。」

―――すたん。
父の居間の襖を閉め切ると同時に、亘理十波は喉の奥に疼きを催した。心臓が踊り出しそうだが、脚には力が入らず、立ち上がる事も叶わない。
「藤五郎様が…。」
震える唇から覚えず言葉が漏れると、
「藤五郎様が如何なされました?」
「ひゃっ!!」
突然の声に、露骨に肩が跳ねた。其処にいたのは、いつも神出鬼没なすぐ下の弟だ。
「長松…驚かさないで。」
「申し訳ありません、父上に呼ばれたもので。
 姉上、腰が抜けておられるようですが…藤五郎様が如何かなされました?」
あっけらかんとした弟は、見かけによらず勘が鋭い。長年胸中に秘めて来た想いも、彼はおそらく気づいているだろう。
「藤五郎様が…私(わたくし)を正室に迎えてくださると。」
微かな声で告げると、
「それは御目出度う御座います、姉上!」
弟はまるで自身の吉事の如く、晴れやかに破顔して。
「姫御前を藤五郎様の御内室にと望む御家は多いと聞き及びますよ。姉上は幸せ者ですね。
 藤五郎様を義兄(あに)と呼べるなんて、私も誇らしい!」
実は密かに憧れていた―――そんな弟の言葉に、改めて事の重さを思い知った気がした。

幼い頃、山で迷子になった事がある。
その時、少女を見つけたのはまだ元服前の彼で、もう帰れないかもしれない不安から解き放たれた安堵感に押され、引っ込み思案な少女が珍しく、背負われた肩越しに、出会った頃からの願いを口にした。
『大人になったら十波を御嫁にしてくださる?』
彼は笑った。
『こんな危ない事しないって約束するならな。』
いつも通りの笑顔で。
いつも通りの声音で。
驚きもしない、狼狽えもしない、それはただ子供をあやす為の空言とも取れた。その場限りの水の様なあやふやな約束を、彼はまだ覚えていたのだろうか―――。
数多の美しく聡明な姫達を差し置いてまで、自分を選んでくれた。
それが何よりも嬉しく、誇らしく、その場にへたり込んだまま、十波はポロポロと涙を零した。

薄明かりの閨の襖をあけると、三つ指をつき、深々と頭を垂れて迎える姫。
「十波。畏まらなくて良い。」
その声に、徐に顔を上げる。まだ幼さの残る、しかし記憶の鏡に映るそれよりは随分と大人びた顔だ。
「漸く二人になれたな。婚儀ってのは如何にも堅苦しくていかん。挨拶ばかりでまともに話も出来ないし…。」
肩が凝ったと左の肩を鳴らしながら成実が座ると、十波はクスクス笑う。
「藤五郎様はすっかり御立派になられましたね。」
「十波も大人になったよ………以前よりは。」
言葉の綾で言ってはみたものの、よく考えたらそれ程でもなかった―――つい余計な一言をつけ足してしまった。年齢からすれば、当然なのだが。
「そんな御世辞は要りませぬ。」
むっと頬を膨らます仕草も愛らしい。ずっと妹だとばかり思っていたのに、いつの間にこんなに愛おしくなったものか。
「素顔の方がうんと綺麗だ。やけに大人びた化粧よりも、うんと。」
それは御世辞ではなくて。
心からそう思ったのだ。
自身気づかぬ内に、変わりゆく想いもあるのだと。

「十波。伝えておかねばならぬ事がある。」
他愛無い想い出話が落着したところで、成実は切り出した。
「何で御座いましょう?」
大きな眼で一つ瞬きして続きを待つ姫を前に、身体を半回転させ後ろを向くと、右腕を衣から引き抜く。
その背から腕にかけて残るのは、行燈の弱い光にもハッキリとわかる火傷の痕。更に外された革の手袋の下から現れた右手は歪で、親指を措いて一つになってしまっている。
「こんな醜い姿でお前を迎える事になって、すまない…。」
背中の向こうで彼女はどんな表情(かお)をしているだろうか。
蝶よ花よと育てられた姫君は、きっと、戦帰りの傷兵を見た事がない。或いは、転んで擦り剥いた事すらないかもしれない。
不意に自身の夫となった者の不気味な姿を見せられて、混乱しているだろうか―――不安に駆られながら振り向こうとした刹那、右手をふわりと包まれた。
「いつも私に差し出してくだされたこの手の温もりは、今も同じに御座います。」
温かい、小さな手に導かれ触れる、柔らかい頬。
「大切なものを守る為に大怪我をなされたと聞きました。この傷は藤五郎様の優しさの証。十波は藤五郎様に嫁ぐ事が出来て、至上の果報者と思うておりまする。」
背後から抱き締められた感触に、いつかの記憶が甦る。あの時は、自分が彼女を背負っていたのだが。
「覚えていてくだされたのですね。十波を御嫁にしてくださると仰った事。」
「武士に二言は無いからな。」
「この御時世、いくらでも言の葉を違える武士もおりますよ?」
「俺は決して違えないよ。」
たとえ遠い空の下、戦に明け暮れようとも、心だけはずっと繋いでいたい。
そう願いながら、初めての夜は更けていく―――。
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