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伊達好きねこたの歴史関連や創作物についての呟き処+創作小説置き場(もちろんフィクション)です。
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2024.05.18Saturday
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「『大』がつく様、努めねば」
2021.05.29Saturday
晴宗+実元+時宗丸+久保姫+澪姫

相変わらず、親馬鹿・爺馬鹿の晴宗さん。
関わりたくない実元さん。昔と今のギャップを指摘されるのが恥ずかしいので、自分の昔話はしようとしないし、子供の頃から自分を知ってる晴宗さんが口を開くとソワソワする。
しかし、大森には右馬助という爆弾がある事を、まだ皆は気づいていない。時宗たんに『うまー、教えてぇ』なんて迫られたら、右馬はぜ~んぶ教えちゃうからね♪
女性陣は何事もお見通し♪

『草相撲』って、辞書で調べると、

>祭礼などで行う素人の相撲。また、野外で行う遊びの相撲。

と出て来たのですが、家主の子供の頃は、2本の草を交差させ、両端を2人がそれぞれ持ち、引っ張って草が切れた方が負け、切れなかった方が勝ち、という遊びの事を『草相撲』と呼びました。
地域ものか?と思いましたが、『昔の遊び』で検索したところ、ちゃんと紹介されていたので、どんな遊びかわからなかった方はちょっと探してみてください(●∀´*)



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ポカポカと暖かな陽気に雀が戯れる午後、
「はぁぁー…。」
障子を開け放しているというのに、室内は陰気な空気に満ち満ちて、部屋の主たる伊達晴宗は、朝から数え切れぬ程の溜め息を漏らしていた。
「如何なさいましたの?そんなに浮かない表情(かお)で。」
いつも笑顔を絶やさぬ妻が、柔らかい声で問い掛ける。
「んー…時宗丸がなぁ……懐いてくれんのだ!」
わっと泣き出す様に、晴宗は脇息を抱え込み、顔を伏せた。
時宗丸は夫妻の孫であり、晴宗にとっては甥にも当たる男児である。
弟に嫁がせた二の姫が産んだ可愛い孫は、次男の息子・梵天丸と共に、数日間、晴宗の隠居する杉目に滞在し、今朝帰って行った。生来子供好きな晴宗は幾度となく二人と遊んだのだが、日頃人見知りな梵天丸がよく懐くのに対し、時宗丸は顔は笑っていても、何処となく余所余所しさがあり、心を開かない風を感じさせた。
「一体、実元はどんな教育をしておるのだ。幼子に私の悪口など吹き込んでおるのではあるまいな。澪は父を庇ってはくれぬのか?」
「まぁまぁ、落ち着いて。実元殿は大殿を嫌うておいででしょうが、原因は大殿にあるのですから、時間を掛けてお許しになるのを待つしかないかと。」
「久保はサラリと酷い事を言うのぅ…。」
グサリと胸に刃を立てられた気分だ。
確かに妻の言う通り、かつて弟の他家への入嗣を妨害し、結果として縁談を潰してしまったのは自分で、恨まれても仕方ないのだが―――。
「実元はしぶといからな。きっと墓の中まで持って行くぞ。」
「なれど、時宗丸は大殿に恨みを持っている訳では御座いませぬ。子供は敏感なもの。親の心の揺れを感じ取っているのでしょう。此処はまず、孫の心を掴む事から始めましょう!」
なんだか、妻の瞳がやたらと輝いている。
「如何しろと言うのだ?」
問うと妻は、後光を背負い、仏の如く穏やかに笑んで、
「大森へ行きましょう。長く澪には逢うておりませぬ故、娘の顔が見とうなったと。親が実の娘に逢いたがっても、何ら不自然では御座いませんわ。」
そもそも、いつでも逢える様にと弟殿に嫁がせたのでしょう、と、痛い一言も添えられて―――。

「はぁぁー…。」
大森城の一室で、城主たる伊達実元は、朝から数え切れぬ程の溜め息を漏らしていた。
「如何なさいましたの?そんなに浮かない表情で。」
歳の離れた妻が、最近漸く大人びて来た声で問い掛ける。
「兄上と義姉上が訪ねて来られるそうだ…。」
差し出された文を見て、妻は「あら」と小さな声を上げた。
嬉しいに違いない。彼女にとっては実の両親だ。彼女は父にも母にもたっぷりと愛情を注がれて育ったのだから、なかなか会えぬ二人が訪ねて来るのは、大層嬉しかろう。
だが、実元は違う。
義姉は良い。彼女は如何なる時も微笑を湛え、親戚とはいえ元々は赤の他人である実元にも良くしてくれる、素晴らしい女子(おなご)だ。
では兄は―――正真正銘、同じ血を分けた兄弟ではあるが、だからこそ過去の仕打ちを許せずにいる。
彼が当主であった頃には渋々従ってはいたが、今や隠居した一老人に過ぎぬ身、干渉されるのは御免だ。
「澪。儂は出掛けても良いか?」
「良くないです!親類とはいえ、客人に御座いますよ?公事もないのに城主不在だなどと、申し訳が立ちませぬ!!」
もう良い歳だというのに、兄が絡むとつい子供染みて駄々を捏ねてしまう。実元はもう一度深く溜め息を吐いて、兄からの手紙を丁寧に折り直した。

ブツッ!
手の中の草が千切れると、ああと落胆の声が漏れた。
「時宗丸は強いのぅ。」
幼い孫相手の草相撲で、晴宗は四回連続で黒星を並べている。
彼は子や孫と戯れるのが楽しいのであって、勝負の行方には拘らないので、純粋に幼子に称賛を贈っているのだが、流石にこう負け続けると、少し寂しくもある。
しかし、何より寂しいのは、ニコニコしている孫の笑顔に、陰りが見える事だ。
「草相撲はようやっておるのか?」
「はい。父上や母上や淡路と。」
そこで晴宗はピンと来た。
「そういえば、実元も昔、草相撲が強かったのぅ。」
「爺様(じじさま)は父上にも負けておられたのですか?」
「『も』は余計じゃ!…だが、負けた……。」
すると、孫の瞳が爛々と輝き始めた。
「父上はどんな御子様でしたか?」
如何やら幼子は、自分は元より、母も近侍の者達も知らぬ父の昔話に興味があるらしい。
「あいつはのぅ、とにかく無口で無表情で、草相撲にしろ、双六にしろ、武術にしろ、強いのに勝っても喜ばぬ。」
「えー、真(まこと)ですか?」
「人嫌いで、子供嫌いで、弟妹達と遊んでいる処など、殆ど見た覚えがないぞ。」
「嘘だぁ。父上は時宗丸と沢山遊んでくださるし、沢山喋って、沢山笑う方です!」
「爺も驚いたぞ。時宗丸や澪が可愛いから、情が湧いたかの?」
庭先で和気藹々と和んでいる二人から少し離れた濡れ縁には、その様子を黙して見守る女子達。
「叔父上の噂話で持ち切りで御座いますよ。」
その言葉は明らかに、半開きの障子の向こうに投げられている。先刻まで妻の隣に腰を下ろしていた噂の的は、兄と息子が自分を話題にして盛り上がっているのに居た堪れなくなり、身を隠したのだ。
「父上は歓談がお好き故、放っておいたら、おいたの話等も出て来るやも…。」
「それは、実元殿も混ざられて、大殿の昔話で反撃せねばなりませぬなぁ。」
実の母娘であり、義理の姉妹でもある二人には、この状況を楽しんでいる態がありありと見える。障子の陰の実元は、顔を赤らめ、只々聞こえぬ振りを決め込むしかなかった。

杉目に帰った晴宗は、ほくほくと満足気に筆を執っている。別れたばかりの孫に、手紙を書くつもりらしい。
「大殿ったら、すっかり御満悦で御座いますな。」
「時宗丸が心を開いてくれたぞ。父の事が大好きだが、爺の事も好きだと言うてくれおった。私も『大』がつく様、努めねばな。」
まるで子供の様に無邪気に喜ぶ夫に、久保姫はいつもの笑顔を尚一層深めた。

一方、その頃、大森では、妻と息子に昔話をせがまれる城主が、必死に逃げ回っているのであった―――。
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