「遊びに来ないか？」 2021.05.24Monday

政宗＋成実＋左馬助＋その他の皆様

ときみなり開設３周年記念。
テーマは『３人』。左馬初登場です。

天正日記以来の家主のイメージ。
左馬＝食。
食といえば、やっぱり外せないのはザネたんですな♪

宛先は違いますが、実際戦中に『暇だから遊びに来てよ』て手紙書いちゃってる政宗様、恐ろしや。
そんな余裕かましちゃって、ある意味大物の証？？

定義のやきめし、美味しかった也ｖＶ

『暇だから遊びに来ないか？』
当主からの信じ難い手紙を受け取ったのは、逗留中の城内だった。
「暇だからって…。」
一昨日に一端交戦が収まり、それ以来不気味な静けさを保っているとはいえ、完全に敵を制圧したでもなく、和解したでもなく、現在まだ戦中である。身体は空いていても、心は落ち着かない。その時分に、暇だから遊びに来いとは、些か呑気過ぎやしないか。
眉間の皺に気づいてか、使いが、
「今日・明日にはこれと言って動きはないだろうから、戦続きでお疲れの皆様を労いたい。との託（ことづけ）を預かっております。」
相変わらず、先読みの鋭い主だ。
そんな悠長な…とは思いつつも、折角の心遣いに、原田左馬助は、
「明朝伺うと伝えてくれ。」
と短く答えて、使者を帰した。

「よく来た、左馬！」
翌朝、本陣を訪れた左馬助を迎えたのは、数日ぶりに会う見知った顔達と、妙に晴れやかな当主・政宗。
「御機嫌麗しく…。」
「今日は安息の日だ！お前と成実の腹も満たせる程に食い物を用意したぞ。たんと食って行け。」
「兵糧丸を…？」
露骨に嫌そうな表情を浮かべる友に、政宗は、
「まさか！俺の自信作だ。」
と、したり顔。
それを合図に陣幕に運び込まれて来たのは、拳大の何やら茶色の物体。見た目はいまいちだが、やけに食欲をそそる香りを放つ。その正体はといえば、
「握り飯に味噌を塗って焼いたら美味かったから、お前達にも食わせたくなった。」

一人、また一人と満腹に与り、席を立って行った。お天道様が真上に昇る頃には、重箱に手を伸ばすのは、成実と左馬助、二人のみ。
「お前ら、ホントよく食うな。それで何個目だ？」
「いちいち数えるもんか。食える時に食っとかないと、明日には野犬に食われる立場かもしれないぞ？」
「食事中の話題では御座いませんな…。それにしても美味い。」
これでもかという程敷き詰められていた焼き飯は、伊達家の二大健啖家の胃袋にみるみる飲み込まれ、ついに最後の一個が姿を消した。
「はぁ～、食った食った！ごちそうさまー。」
「殿、こんな潤沢な米、一体何処から？」
「あ？そりゃあ決まってるだろ？」
政宗はズズズと白湯を啜り、あっけらかんと答えた。
「攻め込んだ他領の田畑だ。」

さして珍しくない事とはいえ、聞いてしまった事をほんのり後悔する左馬助であった―――。