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伊達好きねこたの歴史関連や創作物についての呟き処+創作小説置き場(もちろんフィクション)です。
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2024.05.18Saturday
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「心憎い事をしてくれる…。」
2021.05.24Monday
成実

20110604、命日記念小噺を少々手直ししました。
亘理は彼女の出身地。
想い出に耽る成実たん一人。

玄松院が亘理の姫で良かったね。
亘理が相馬との境で良かったね。
成実たんを亘理に入れた事で、一石二鳥(*●∀゜*)b

でも、玄松院のお墓は、亘理にないよ~ぅ!!



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今年も憂鬱な季節がやって来た。
今日も朝からしとしとと雨が降り続けている。
恵みの雨とはいえど、こうも雨続きだと、流石に気も滅入るというもの。
さらに、半年程前に賜ったこの亘理という地は、大きな川と海を擁し、物流には便利なれど、水害と湿気には、入府以来、度々気を揉んでいる処だ。
圧し掛かる倦怠感と闘いながら、主君が寄越した御機嫌伺いの文に返事を書こうとしつつも、筆も乗らず、ふと外を見遣ると、鬱蒼とした山が目についた。
と同時に、脳裏に甦る古い記憶―――。
「少し出て来る。」
突然の発意に、近侍は慌てて支度を始めたが、近間だから供は不要と制して、一人屋敷を出た。

陰気な景色は、山に入ると一層重さを増し、とても昼とは思えぬ空気を纏っている。
しかし、生来物怖じしない性格に加えて、もういい大人でもあるので、気にせず歩を進めた。一歩、また一歩、その足跡が過去を手繰り寄せるかの如く―――。
暫く歩くと、目の前に現れた大きな洞を持つ古木。それは、見覚えのある、記憶の中の姿そのままで。
―――あの時もこんな空模様だったな…。
激しい雨が勢いを弱め、土の匂い漂う中、ちょうど今と同じ色をしていた。

昔、この辺りに城があった。
親類の縁あって、自分も幾度か訪れたものだ。
その城には幼い姫がいた。人見知りで、引っ込み思案、いつも父や侍女達の陰に隠れている印象の大人しい少女だった。
或る日の事、夕餉が近くなっても姫の姿が見当たらず、城内くまなく探そうとも、影も形もない。
雷鳴轟き、叩きつける様な通り雨が降り出す中、これはもしやと男達は山に入った。
やがて小降りになった頃、大樹の洞に身を埋めて雨宿りしていた姫を見つけたのは、大人達と共に探しに出た、まだ元服も迎えていない頃の自分で―――雨上がりの空に架かった鮮やかな虹を仰いで、彼女を負ぶって歩いたっけ。

探し物があって一人山に入ったのだと言っていたが、結局それが何だったのかは聞けず終いだった。
ただ、あの帰り道の約束通り、彼女は自分の元へと嫁ぎ、そして八年前、不帰の客となってしまったのだ。
その彼女が生まれ育った土地を、今、自分がこうして治める事になろうとは―――。
「梵の奴…。」
頭を過ぎるは、亘理を託した主の得意の含み笑い。
「心憎い事をしてくれる…。」
ついつい表情が綻んだ。

六月四日。
今日は彼女が旅立った日―――。
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