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伊達好きねこたの歴史関連や創作物についての呟き処+創作小説置き場(もちろんフィクション)です。
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2025.11.19Wednesday
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「子供は好きか?」
2021.05.24Monday
時宗丸+淡路+実元+仔猫

時宗と淡路の出会い。
以前拍手御礼だったものを、若干手直ししました。

後に、成実から絶大の信頼を得る傅役・淡路さんは、元々子供が好きではありませんでした。
しかも、相手は、超生意気で悪戯好きなボンボン。(4年後にはもう一人増える…Wパンチ!)
偶然通りかかっただけの土地勘も知人もない大森で、主人の我儘(悪気はない)に振り回される日々。
彼の強靭な精神力がなければ、とっくにストレス性の病でお亡くなりになっていた事でしょう。
時宗がちゃんと礼儀を弁えた人間に育ったのは、淡路の努力の賜です。



拍手



「其処な者!手を貸せ!!」
それは運命の第一声だった―――。

昼下がりの森の中、清々しい初夏の風を供にして、一人行脚している処へ、突然降り注いだ偉ぶった一言。まだ幼い舌足らずな子供の声だ。
見上げると、割合長身と評される自身の背丈を遙かに超える木枝の先に、腹這いになり、だらりと片脚を垂らした幼児が一人。
「降りられぬ。手を貸せ。」
真顔で再び投げ掛けられた言葉を受け取る人間は、辺りを見回そうとも自分以外に存在しない。
―――無礼な子供だ。それが助けを求める態度か?
癇に障り、そのまま通り過ぎようとした耳に、
「にゃあ。」
微かな囁きが届いた。
再び木の上を見遣ると、不行儀な子供の懐に、掌程の小さな仔猫が震えている。時折発する声は、今にも消え入りそうで、か細く痛々しい。
―――猫を助けようとしたのか。
横柄な態度は仔猫に免じて水に流してやる事にして、青年は鍛え上げられた太い腕を差し出した。

「うちの息子を救ってくれたそうだな。礼を言うぞ、若いの。」
豪快に笑う父親を前に、ははぁと得心した。
枝から降ろしてやると、子供は「父上に礼をして貰う」と言って、青年の手を引いた。案内された先は領主の居城。今一歩思惟に欠けた小さな英雄は、その領主の嫡男であった。
なるほど、日頃から人を召し使う立場な訳だ。道理で、見知らぬ大人相手にあの振る舞いも納得がいくというもの。
父親の膝の上で猫と戯れる子供を眺めていると、その様子をニヤつきながら見ていた父の口が不意に動いた。
「そなた、子供は好きか?」
随分唐突だな。と思いつつ、実際好きでも嫌いでもないので、「はぁ、まぁ」と語尾を濁す。
すると、更に、
「腕に覚えはあるか?」
一体何が言いたいのだろうか?何か疑われているのか?しかし、領主の表情には微塵も陰りが見られない。
「腕を磨く為行脚しております故、我が身を守れるくらいには…。」
その返答に、彼は一層晴れ晴れとした笑顔を湛え、息子の頭をわしわしと撫でた。
「良かったな、時宗丸。お前の傅役が見つかったぞ。」
一瞬、展望を見失った。
この流れだと、まるで自分が若君の傅役に抜擢された様ではないか。
自分はまだまだ旅の途中である。此処で腰を落ち着ける気もなければ、生意気な若様のお傅りに徹するつもりなど毛頭ない。
しかし、運命は無常だった。
有無を言わさぬ眼光を以て、青年の鼻先に扇子を突きつけ、領主は言い放つ。
「息子を頼むぞ。」
と。

まるで愛娘を嫁に出す父の如き台詞で青年を召し抱えた領主は、名を伊達実元と言った。
いつか風の噂に聞いた事がある。智勇に優れ、恐れを知らぬ、奥州の荒武者の名だ。
一度は相見えてみたいとぼんやりと願ったその人に、こんな形で巡り会おうとは、人生とは判らないものである。
その血を引く若君も、何処か同じ輝きを放っている。
そもそも、ひ弱い命を救うべく後先考えずに颯爽と大樹に登り、自分が通り掛かるまでずっと、あの不安定な枝の上で怯える仔猫を守り続け、泣き言の一つも吐かなかったとは、幼いながらもなかなかに立派な性根ではないか。

―――少し寄り道をしてみるのも良いかもしれぬ。

こうして阿部淡路は、やがて心血注いで仕える事となる、唯一人の存在に出会ったのだった―――。
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