忍者ブログ
伊達好きねこたの歴史関連や創作物についての呟き処+創作小説置き場(もちろんフィクション)です。
[PR]
2025.11.19Wednesday
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「必ず此処へ帰って来るよ。」
2021.05.24Monday
成実+十波+千雪

まったりと一家団欒でお月見。
とってもみじか~いお話です。

猛暑よ早く終わらないか、という気持ちと、子煩悩な成実たんが書きたくなったので。
成実はきっと、子供と同じ目線でものを見られるパパだよ。
縁側で日向ぼっこしながら、一緒に居眠りしちゃって、それを眺めながら十波がニコニコしてる。
そんな家族だったら良いなぁ。
十波の方が年下ですけど。

成実の妻子がおりますので、苦手な方は閲覧をお控えください。



拍手



見上げた空にぽっかりと浮かぶ望月。その姿を写し取った庭池の水面(みなも)がゆらゆら揺れる。
「ととさま、おいしいです。」
幼い娘が懸命に頬張るのは、『今宵は十五夜だから』と主君が趣味の一環で作って届けてくれた、大量の団子。哀しいかな、花より団子で食欲旺盛な様は、違え様なく我が子だな、と成実は思う。
隣に寄り添う妻は、
「そんなに急いては、喉に詰まらせますよ。」
と心配しながらも、表情は穏やかだ。
盆の上から団子を一つ攫い、ひょいと高く放り投げて口の中に落とせば、娘が嬉々としてそれを真似た。
「もう!二人共、お行儀が悪い。」
そんな遣り取りがこの家の日常で、他愛なくも幸せな時間である。

心地良い涼風が頬を撫でる中、膝の上では可愛い娘がすっかり夢の中。足に掛かる重みを噛み締めながら、
「大きくなったものだな…。」
そう呟くと、
「戦、戦に明け暮れて、藤五郎様はちっともお城に居てくださらないのだもの。」
妻は唇を尖らせる。
寂しい想いをさせている。妻にも娘にも、そして勿論、自分自身も。
我が子の成長を傍らで見守りたい気持ちは山々だ。しかし、時世はそうさせてはくれない。北へ南へ東へ西へ、息吐く間もなく駆け回る日々。
何があろうとも決して振り返らない、後悔はしない、その心意気の象徴として掲げた毛虫の前立てと、香車を背負った陣羽織。
それでも身体は傷むし、時に挫けそうになる事もある。そんな時、心の渇きを癒してくれるのは、愛しい家族の笑顔だ。
『戦に送り出すのが怖いのです。』
いつか彼女は言った。
『二度と帰らないかもしれないと、不安になるのです。』
どうかこの夜を無事に生きて越えられますようにと、祈りながら、泣き濡れて夜を明かすのだと。
不意に成実の不自由な右手が、妻の左手を掴んだ。
「十波と千雪が此処にいるなら、俺はどんなに遠くへ行っても必ず此処へ帰って来るよ。俺の居場所は、城でも在処でもなく、お前達の居る処だからな。」
返事はなかった。だが、その代わりに、妻は痛々しい火傷の痕が残る成実の手に、そっと自身の右手を添えた。
如何ほど美しく飾られた言葉よりも、ただ触れられるこの距離が愛おしい。

―――このまま時が止まってしまえば良いのに…。

願う事は罪ではないだろう―――。
PR
COMMENT
NAME:
TITLE:
URL:

PASS:
HOME  753 752 751 750 749 748 747 746 745 744 743 
私暦
10 2025/11 12
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30
御案内
HN:
遥瀬ねこたろう
性別:
非公開
自己紹介:
伊達成実・伊達綱宗・大崎義宣をこよなく愛する京都人です。

ご連絡は以下の3つの方法にて承っております。
【1】記事のコメント(本文以外未入力可。家主が承認後公開設定。『非公開で』とお書き添え頂ければ公開致しません)
【2】拍手コメント(非公開)
【3】メールアドレス toki716zane@yahoo.co.jp (件名に『716日より』と入力お願いします)
御尋ね者は此方から
携帯版は此方から
足跡
忍者ブログ [PR]

Design by sky & Lenny