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伊達好きねこたの歴史関連や創作物についての呟き処+創作小説置き場(もちろんフィクション)です。
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2025.11.19Wednesday
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「誰にも言うな。」
2021.05.23Sunday
時宗丸+義姫+梵天丸+その他のみなさん

カラッと晴れたお天気の良い日、青い空を見上げると吸い込まれそうで怖かった(家主が)。
やんちゃ小僧の疑似母子物語。

1コ前に挙げたSS(「墓を建てて頂きたい。」)があんなだったから、義姫擁護で…という訳ではないんですけどね。

伊達SS一作目の時にも書きましたが、義姫をただの悪役にしたくないんです。
母親らしい義姫をいつか絶対書こうと思ってました。
時宗に梵を重ねる義姫と、義姫に母を重ねる時宗。
需要と供給の疑似母子物語でした。

子守唄って、存在したのでしょうかね??
唄う時宗、きっとこの子は音痴と見せかけて上手い気がする…(●∀゜人)♪



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空がとても高くて、吸い込まれる様に木に登った。
少しでも近づきたくて、めいいっぱい手を伸ばす。周りなんて見えていなかった。
身体が揺らぐ。
気がつけば空は大きく回転して―――真っ白になった。

深い闇の中に一筋、光が射した。それは次第に広がり、やがて光の中に形を取った木目―――天井だ。
首を捻って辺りを窺おうとした瞬間、右の側頭部に痛みが走り、続いて肩へと繋がる。
「いっ…!」
小さく漏らした悲鳴が人を呼んだ。
眼の前に現れた女は、何処かで会った事がある様な気がする。果たして何処の女であったか…?
記憶を探っていると、女は視線を外し、声を上げた。
「奥方様、お目覚めになりましたよ。」
その声に呼ばれてやって来た別の女―――この顔は知っている。
「―――よし……さ…ま。」
「大人しくしておれ、時宗丸。頭を打っておるのじゃ。安静にせよと薬師も申しておる。」
冷たくもなく、温かくもない、凛とした声音。しかし、細めた瞳や頬に触れる白い指は柔らかく、自分の知っている彼女はこんな女(ひと)だったっけ―――鈍る頭で時宗丸は懐疑した。

病の遺産として片眼を失った一つ年長の主を、鬼子と罵った彼の生母。
求めても触れられぬ母をいっそ嫌おうと努力しながら、それも叶わずもがく主を、時宗丸はずっと傍で見て来た。
あの母こそ鬼だと、信じて止まなかった。
そんな鬼女が、木から落ちて地面に臥していたであろう鬼子の小姓を拾い、自ら手拭いを絞って身体を拭き、打ち身を冷やし、綿入れを掛け直してくれる。
痛まぬ左の肩をポンポンと軽く叩きながら、やがて彼女が口にしたのは―――子守唄。
清らかな優しい声に誘(いざな)われ、時宗丸はゆっくりと眠りの谷へと堕ちて行く。
この唄を覚えておこう。そしていつか、梵に唄ってやろう。
遠ざかる意識の中で強く思った。

「何処へ行っていた時宗!小姓のくせに、主の許しなく暇入りか!?」
久々に対面した主は、顔を合わせるなり吠えた。今にも噛みついて来そうな勢いだが、うっすらと潤んだ瞳は見逃さない。
「悪かった。」
心配してくれたんだな、とは口に出せば殴られそうだったので、喉の奥に仕舞い込む。
大人達は誰も動揺する事なく二人を見守っている処からすると、如何やらこの主だけが事情を知らぬ模様。それは誰かの策略なのか。
『此処での事は決して誰にも言うな。』
別れ際、射抜く様な眼差しで義姫が言った。
『妾(わらわ)に会うた事は誰にも話してはならぬぞ。』
五日もの間、甲斐甲斐しく世話をしてくれた義姫。きっと彼女は、時宗丸の中に我が子の姿を垣間見ていたに違いない。本当は愛しくて堪らないのに―――そんな心が痛い程伝わって来た。
話したい。
梵天丸に、母は決してお前を嫌ってはいないのだと教えてやりたい。
しかし、約束を交わした以上、破る訳にはいかない。
「久しぶりに会ったんだ。今宵は床を並べて寝ようぜ!」
時宗丸の誘いに「何故だ」と仏頂面を見せたものの、梵天丸は否定も抵抗もしなかった。

床に入って間もなく、時宗丸が紡ぎ出した唄が、なんだか妙に懐かしく感じる。
「何だ、その唄は?」
「母上の子守唄。」
…お前の母上のな。
梵天丸の瞳を見据え、ひっそりと心の中で呟いた―――。
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