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伊達好きねこたの歴史関連や創作物についての呟き処+創作小説置き場(もちろんフィクション)です。
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2025.11.19Wednesday
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「ありがとう。」
2021.05.23Sunday
成実+宗実+その他

ときみなり開設一周年記念で展示していたものを、処々手直ししました。
一周年という事で、テーマは「一年」。
成実の独白、みたいなもの。

殿が亡くなって一年、想い出に浸る成実たんです。
もっと大人シリーズの先、壮年期を飛び越えて、一気に老年(笑)

そして宗実初登場。
家主は、この養父子が大好きです。
うちの宗実は、時宗丸によく似ております、性格が。ズケズケ物を言って時に他人を敵に回すけど、悪気は全然ないタイプ。見た目以上に一生懸命。
同じ幼名を持つ成実のかつての友=芦名義広ですが、かつての友って辺りは完全創作なんで悪しからず。
実際は多分、成実が選んだんじゃなくて、政宗様が「じゃ、喝食丸あげる」みたいな感じだったんじゃないかとは思っている…。
宗実は狩りが得意だったらしい。

うちのパソ子が『宗実』を一発変換してくれて、ビックリしたよ♪


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小高い丘に登ると海が見えた。
この海の向こうには、いつか彼が行ってみたいと言った、見知らぬ国々があるのだろう。
いつも他人が思いもつかぬ様な事を考える人だった。その望みを叶える為に東奔西走する家臣達の苦労も厭わない。しかし、何処か温もりを感じさせ、力になってやりたいと思わせる不思議な人―――。

自分がこの土地を任されて間もない頃、視察という大義名分の下、彼が遊びに来た。
「木登りをしよう。」
突如発せられた提案に、頭でも打ったかと訝しんだものだ。
「お前も来い。」
大真面目に手招きするものだから、仕方なくつき合う事にした。木登りなど何年ぶりの事だろうか。何が哀しくて、いい歳をした男二人に枝を貸さねばならぬ、と大樹の嘆きが聴こえて来そうだ。
手頃な枝に腰を落ち着けると、ぐんと空が広がった。雲一つない澄みきった青空に、暫し瞼を薄く下ろす。
「昔、お前は俺を守ると言った。」
清かな風に運ばれて届いた呟き。
幹越しに声の方を見やると、ちょうど陰になって顔は見えない。
「お前はずっとその約束を守って来た。なのに、突然消えてしまった。俺はあの時後悔したんだ。俺の事を誰より理解しているはずのお前にさえ見限られる程、大切な事を見失っていたんだと…。」
「……。」
「帰って来てくれて、良かった…。」
それきり黙り込んでしまった彼がどんな表情(かお)をしているか、見えなくても、瞼の裏に描く事は容易だった。
そんな理由ではない。
自分の居場所、存在の意義に疑問を感じた。其処にいてはならないのではないか、自分の存在が家を滅ぼしてしまうのではないか、そんな不安に駆られて―――逃げた。
恣意だったとは思っている。
だが、彼の数々の処遇に異存はなかったか。そう問われれば、手放しで肯定する事も難しい。
時を経て、今語られた彼の想い。応えたいのはただ一言、
「ありがとう。」
それだけ。それだけで良い。
一度は家も主も何もかも捨てた自分を、待っていてくれて、ありがとう。
余計な言葉は要らない。一言で全て伝わるはずだから。

北の方角に目をやると、遠くの空に一瞬、見えるはずのない街の賑わいが映し出された気がした。
「お前が命を懸けて守り続けた仙台は、今も忠宗公がしっかりと守ってくれているよ。」
彼が旅立って一年、幼い頃から描いていた理想郷があの場所にある。
少し疲れて、眼前の木に手をついた。
「随分と皺が増えたものだなぁ。」
込み上げる苦笑い。あの時の様に、この木に登る事はもう出来ない。
「養父上(ちちうえ)ー!」
微かに声が聴こえた。振り返ると、息を切らしながら現れたのは、実子がない代わりに養子に貰うと約束した彼の九男。まだ正式に迎えた訳ではないが、度々此処を訪れ、将来の練習だと言って、自分を養父(ちち)と呼ぶ。
「養父上。山鳥を沢山獲りました!御賞味なさいますか?」
「おう。食う。」
この青年を指名したのは、かつての友と同じ幼名を持っていたから。
そんな他愛無い理由であったが、気が強く我儘で身体を動かす事が大好き―――まるで若き日の自分を見ている様で、妙に愛着を覚えた。

丘を下る途中、強い風が一吹きし、何処からか鳥の羽根が一片、掌に落ちた。
『鳥は二枚の翼で空を飛ぶんだ。』
不意に耳の奥に蘇った懐かしい声。
『俺も同じだ。この背には二枚の翼がなければ飛べない。一枚は小十郎、一枚は…お前。』
思わず顔を綻ばせる。
「冥府にも鷹はいるか?」
あと何年、かかるかはわからないが。
「俺がそっちに行ったら、また一緒に鷹狩に出ような、梵。」
そこへまた強い風が吹き上げ、手の内の白い羽根を天高く攫って行った―――。
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