伊達好きねこたの歴史関連や創作物についての呟き処+創作小説置き場(もちろんフィクション)です。
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2025.11.19Wednesday
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「蛇は出なかった」
2021.05.23Sunday
時宗丸+綱元+淡路+梵天丸
伊達家の正月行事。
誰にでも得手不得手はあるものです。
(サイトに投稿時)お正月という事で、やっぱり何か正月ネタを…から生まれた一編。
梵は元服前にすでに連歌に参加して周りの大人を驚かせたそうですが、時宗は何となくそういうの苦手そうだな、と思います。
成実の歌が殆ど残ってないのって、苦手だから滅多に詠まなかった、とかいう理由じゃないよね??
それはそれで可愛いんだけど…n●∀´n
ここの処、綱が好き、という声をちらほら聞きますし、たまには綱を活躍させよう!という意気込みだったのですが、やっぱりTHE☆謎の人・綱元は、なかなか家主の思い通りにはさせてくれませんでした。
伊達家の正月行事。
誰にでも得手不得手はあるものです。
(サイトに投稿時)お正月という事で、やっぱり何か正月ネタを…から生まれた一編。
梵は元服前にすでに連歌に参加して周りの大人を驚かせたそうですが、時宗は何となくそういうの苦手そうだな、と思います。
成実の歌が殆ど残ってないのって、苦手だから滅多に詠まなかった、とかいう理由じゃないよね??
それはそれで可愛いんだけど…n●∀´n
ここの処、綱が好き、という声をちらほら聞きますし、たまには綱を活躍させよう!という意気込みだったのですが、やっぱりTHE☆謎の人・綱元は、なかなか家主の思い通りにはさせてくれませんでした。
「綱、匿って!」
まだ幼い少年の声に叩き起こされたのは、一番鶏も鳴かぬ早朝の事で、細く開かれた障子の隙間からキンと冷えた空気が流れ込み、聞かなかった振りをしようにも、無視できない状況であった。
嫌々身を起こし、安眠を妨害された不満をめいいっぱい湛えた瞳で睨めつけると、障子越しに身を屈めて覗き込んでいた少年は怯む様子を見せながらも、
「こんな時間に迷惑な、てんだろ?わかってるよ、それくらい…。」
白い息を吐きつつ対抗する。
「迷惑なのは時間だけではありませんよ、時宗様。まず中に入って、其処をお閉めなさい。」
不機嫌な綱元をこれ以上怒らせては恐ろしい事になる。時宗丸は大人しくその言葉に従った。
蛇に逢うた蛙、とはこの事であろうか。褥の上に腕を組んで胡坐を掻く綱元と向かい合う形で畳に正座した時宗丸は、すっかり萎縮して、ちらりちらりと相手を窺うが、先刻から少しも乱れぬ表情は流石、綱元である。
綱元を怒らせると蛇が出る。
それは、彼の先祖が大蛇退治をしたという故事に例を引いて梵天丸が慣用する言葉だが、実際極度の無口で得体の知れぬこの男と二人きりで対面するなど、父よりも傅役よりも怖いのだ。それでも此処へ来てしまったのは、他の者達も同じ意識を持っている為、彼の部屋の中まで詮索する者はないと踏んでの勇気ある行動であった。
「で…何用で?」
「……今日、何の日か知ってるだろ?」
「正月恒例の連歌会の日、でしょうか?」
「うん。」
そして時宗丸は口を尖らせて、
「連歌は苦手だ。」
ぼそりと呟いた。
「若様方はまだ参加しないでしょうに。」
「梵は出るって言うんだ。あいつ、よく基信相手に詠んでるし。」
遠藤基信は、梵天丸の父・輝宗の近侍で、家中で知らぬ者はない程の無類の連歌好きである。
「梵がやるなら、絶対俺もやれって言われるよぅ…。」
珍しく弱気な事を言う。
嫌な事から逃げようなど士道に反する。とはいえ、時宗丸はまだ子供だ。年齢が近いのを理由に、日頃何かと梵天丸と比べられてしまうのは、確かに酷である。
たまには甘やかしてやるか。
「居るのはお好きに。但し私は干渉しませんので。」
それだけ告げると、本当に其処にいる時宗丸が見えない、とでもいう様に、綱元は一人さっさと布団に包まってしまった。
「綱。俺も寒いんだけど…。」
声を掛けても返答はない。
「じゃ、勝手するぞ。」
同じ布団の中に滑り込んでも尚、無干渉を決め込んで動かなかったが、
「さむ…。」
無意識に零し小さく身体を震わせると、傍へ引き寄せられた。
「梵に、蛇は出なかったって言っとくよ…。」
まだ眠りに堕ちてはいないはずの綱元にそっと囁いて、時宗丸はその懐でぬくぬくと眠った―――。
夜が明けると、予想通り、傅役が綱元の部屋を訪れた。
彼は実に鼻が利く。かくれんぼをしても、部屋から脱走した時も、見つからなかった事は一度もない。
「時宗様がお邪魔しておりませぬか?」
「さぁ…。」
「左様で。」
屏風の陰からそのやりとりを窺っていた時宗丸は、背中に冷たい汗が伝うのを感じた。音が届いてしまうのはないかと思う程、心臓が高鳴る。
「では失礼。他を当たって参りまする。」
一礼して傅役は去って行った。
チクリと胸が痛む。
自分の我儘の為に、彼はこの広い城中、動く的を探し回る羽目になり、見つからなければきっと上からお叱りを受ける事になる。これまでにも幾度となく迷惑を掛けて来たが、大切な正月行事とあっては―――。
「綱。俺やっぱり行く。」
四つん這いのまま顔を出す時宗丸。しかし綱元は振り向かない。
「世話掛けたな。」
その背中に投げて出口に向かうと、擦れ違いざま、彼は一枚の紙片を差し出して来た。広げてみると、
「日頃の行い良ければ吉事有り。」
綱元らしい簡素な言葉が綴られ、時宗丸は「有れば良いな」と苦々しく笑った。
さて、傅役を追わねば。
小走りに障子を開けた瞬間、時宗丸は小さく悲鳴を上げそうになった。先程去ったはずの傅役が、其処に座っていたからだ。
「あ…淡路。なんで…?」
「淡路の鼻は時宗様の匂いを逃しませんのでな。」
「出て来ないかもしれないじゃないか。」
「時宗様を信じております故。」
まるで問題などない、とでも言いたげな余裕の笑顔。
「……意地悪。」
「どちらが?」
拳で額を小突かれた。相手は自分の従者であるはずなのに、少しも嫌な気はしない。
「では参りますか。」
「うん。」
「まずは朝餉に。」
そうして二人は連れ立って梵天丸の居間を訪れ、朝餉の席で「梵がやりたいだけだ。時は黙って見てろ。」と告げられたのだった。
綱元が密かに梵天丸に接触していた事は、誰からも明かされる事はない秘密―――。
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伊達成実・伊達綱宗・大崎義宣をこよなく愛する京都人です。
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【3】メールアドレス toki716zane@yahoo.co.jp (件名に『716日より』と入力お願いします)
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