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伊達好きねこたの歴史関連や創作物についての呟き処+創作小説置き場(もちろんフィクション)です。
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「折れるのは唯一つだけ」
2021.05.23Sunday
成実+十波

当時の七夕は今の7月ではないですが、7/7、折角なので七夕のお話。(サイトに初投稿したのが7/7でした。)
十波は女の子らしい遊びが大好き。
成実は乙女心に超疎い。
ほのぼの夫婦ストーリー。

十波が登場する時は、めいいっぱい幸せに書きたいのです。
同じ願い事を短冊に書いた二人。鬱陶しいくらい仲良しで良いじゃない。



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縁側に広げた色とりどりの紙を、姫は忙しなく折っていく。
一枚は花へ、一枚は鶴へ、一枚は袿へ次々と姿を変え、脇に据えられた盆に溢れんばかり積まれている。
「十波、そんなに沢山の折り紙、何をするんだ?」
暫く黙って妻の様子を窺っていた成実が、ついに口を挿んだ。
「笹に吊るすのです。七夕のお飾りに御座います。」
ふわりと微笑む彼女は、やはりまだ幼子の様で、永きの想い出が蘇る。
そういえば昔、十波につき合った事があったっけ?
懐かしい場面を思い返していると、いつの間にやら無意識に紙を一枚、手に取っていた。
「藤五郎様も何か折られますの?」
「俺が折れるのは唯一つだけだ。昔、お前に教わった。」
器用な左手と不器用な右手で折り上げられた一羽の鶴はやや不格好で、座らせるとコテリと右に倒れた。
「あー、ヘタクソ!やはり女子(おなご)には敵わぬか。」
まるで子供の如く悔しがる夫を傍から眺めて、十波はクスクスと笑った。

出来上がった大量の飾りを笹に結わえつけ、二本松城の庭はいつになく賑やかになる。最後に懐から取り出されたのは二枚の短冊。その一枚を差し出し、
「此処にお願い事を書いて、十波に見えぬ様に笹に結わえてくださいませ。お飾りを燃して天へ送るまでに人に見られたら、お願い事は叶いませぬ故、決して見られぬ様に。」
幾度も念を押して、十波は自身の短冊に何か書き始める。そして、小走りに笹へ向かうと、大きな吹流しの陰にそれを隠した。
成実は軒を仰いで考える。
願える事は一つだけ。御家の安泰か、太平の世か、はたまた豊作か―――あれこれ想いを馳せた後、いやいや欲張りはいかんと筆に込めたのは、とてもささやかな祈り―――。

翳りない夜空には、星の川が流れる。年に一度しか逢瀬を果たせぬという二人は、無事に会えただろうか?
縁側にだらしなく寝そべって、並んで見上げた満天の星空に想いを馳せる。

繋いだ手の温もりが永遠に続きますように。

二人分の想いを載せた短冊は、明日、天高く舞い上がる―――。
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