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伊達好きねこたの歴史関連や創作物についての呟き処+創作小説置き場(もちろんフィクション)です。
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2025.11.19Wednesday
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「カッコ良かったぜ」
2021.03.28Sunday
成実+近習+その他のみなさん

渋川炎上!成実の右手のお話。
成実の右手!凄く書きたかったエピソードがやっと書けた(●∀゜人)♪
実際どんな状況だったか、詳細は判らないので、中身は全部創作だったり…。
(なんでソコ、もっとしっかり書き遺してくれなかった、成実!?)

家臣の前では大人ぶってるけど、政宗様と二人の時はお子ちゃまに戻る成実です♪
そんな成実たんが大好きですvV



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一応の終戦からおよそ一月、二本松に睨みを利かせつつの渋川での逗留にも慣れ、部隊には少なからず気の緩みも見え始めた事に、このまま放っておいて良いものか、と大将たる伊達成実は悩んでいた。
今宵などは、もう夜も更けて来たというのに、まだ何処かで酔っ払いの下手な歌が聴こえる。
戦慣れした老臣達を次々と亡くした人取橋だったから、完全なる終戦ではなく、またいつ出陣を承るか知れない状況の中、今の内にはしゃぎたくなる気持ちも判らなくはない。
常に気を張っていては、いざという時にへばってしまう。それならば、少々の悪ノリは許しておこうか?
頬杖をついて思案を巡らし、六度目の溜め息を漏らしたところへ、近習(きんじゅ)がやって来た。
「成実様、そろそろお寝みになられては?」
自分より幾ばくか歳若い近習が瓶子(へいじ)を軽く振って見せる。酒気の力を借りて良い眠りへ誘おうというのだろう。気の利く事だ。
「うん、じゃあ、お前も飲め。」
すると近習はハッと驚きの表情を貼りつけ、
「あ…ありがたき幸せ!」
成実が差し出した瓶子に、縮こまって盃を掲げた。
ゆったりとした時間の中、談笑などしつつ、お互いに四、五杯煽った後、
「つき合わせて悪かったな。今日はもう退がって寝め。」
という成実の言葉に、近習は「失礼致します」と席を立ったものの、足元が若干よろけている。
「ちょっ!お前、飲めないのか!?」
支えてやろうと成実が立ち上がった瞬間、近習の身体は大きく揺らぎ、灯りを蹴飛ばしてしまった。
倒れる先にあるのは――――――火薬箱!?
「八助(やすけ)っ!!!」
その夜、渋川城は劫火の元に跡形もなく焼け落ちてしまった―――。

遠くでぼんやりと誰かの声がする。耳の奥に滝でも流れているかの様に、何かに遮られてよく聞き取れない。
すると声は段々近づいて来て―――。
「八助っ!」
ハッキリと形を結ぶ。
反射的に瞼が開くと、その瞳に飛び込んで来たのは、刺す様な陽光と、それを背負った初老の男。
「―――うま…の、すけ様…?」
「いつまで寝ておるか!御事(おこと)よりよほど重症の若の方が、とうにお目覚めじゃぞ。」
身体が怠い。
あちこちがチリチリと痛み、軽い火傷や擦り傷が目立つ。
酷く痛む後頭部に触れてみると、コブが出来ていた。
重たい上体をどうにか起こし周囲を見廻すと、視野に入るのは崩れ落ちた城の残骸と、重軽傷を負った家中の者達の姿。
曖昧な記憶を手繰り寄せてみる。
確か昨夜は主に酒を運び、相伴を許されて、嬉しくてつい飲めない酒を数杯煽ってしまった。
その先が克明さを欠く中、唯二つくっきりと浮かび上がった、火薬箱に向かって倒れる行燈と、突如視界を奪った主の着流しの柄。
「……。成実様が…私を?」
「炎の中から引き摺って出られたわ。」
身体中の血液が音を立てて退いていった。霞みがかっていた記憶の破片が繋がり、自分の存在が恐ろしくなる。
「――成実様は…どちらに?」
「蔵じゃ。」
それを聞くなり八助はふらふらと立ち上がり、重苦しい足取りで右馬助の指した先へと歩を進めた。

主要な建造物はすっかり瓦礫と化してしまったが、蔵だけは完全な形を残していた。
半開きになっていた扉をくぐると、薄暗がりの中に薬師の背中、その向こうに俯せに横たわる主の姿が見えた。
上半身と右の腕を包帯に覆われ、一瞥すると死体の様にも思えたが、濡れ手拭いを握る左手が時折不自然な動きをするので、かろうじて意識はあるようだ。
「成実様。」
華奢な声で呼び掛けると、主は目元を覆っていた手拭いを外し、此方の姿を確認して、微笑を浮かべて手招きした。
薬師が一礼して立ち去る。
蔵の中には二人きりとなった。
「怪我…してるな。痛むか?」
床に伏せたまま、主が徐に問い掛ける。
「―――大事、御座いません…。」
冷静に応えたつもりだったが、少し声が上擦ってしまった。
「そ…か。良かった……。」
眉を顰(ひそ)め、深く息を吐きながら、脂汗を拭う。背中と右半身の火傷が酷いらしい。右腕はずっと床に投げ出されたまま動かない。
急激に目頭が熱くなり、止め処ない涙が溢れた。
―――あの時、酒を飲まなければ。
こんな事にはならなかったのに。
自分が酒に弱い事など重々承知していたのに。それを知らない主の誘いに図に乗らなければ、こんな事にはならなかった…。
「八助。如何した?」
黙り込んだ自分を気遣う優しい声。
「八助?」
もう一度主が呼び掛けた時には、その手は懐へと伸びていた。
「腹を切って詫びまする!!」
両手に握った懐刀の銀の刀身が、外からの僅かな光を反射する。
主にこんな大怪我をさせておいて、生き延びて良いはずがない。
固く眼を閉じ、勢いに任せて、刀身を我が身へと突き立てた―――。

―――はずだった。
右手首に違和感がある。
手―――人の手だ。
顔を上げると、いつの間にか半身を起こした主が、怪我人とは思えぬ程の握力で我が手首を掴んでいる。
「し…げざね、様…?」
「此処で死んで何の意味がある?そう易々と死なせるくらいなら、初めから助けたりしねぇよ!!」
怒りを露にする成実。
「こんな…主人に、こんな怪我をさせて…他にも大勢、怪我人を出して……私の所為なのに、私が調子に乗らなければ…こんな事にはならなかったのに…許されるはずは御座いません!腹を切るが道理というものっ!!」
「そう思うなら!」
泣きじゃくる近習を射抜く様な眼差し。
「生きて―――誠心誠意、俺に仕えよ!!」
時が止まった。
震える指の間から、懐刀がするりと抜け落ちた。右手首にくっきりと痕を残して、主の手が離れていく。
蔵の中に嗚咽だけが響く。
永の沈黙――――――。
やがて。
「少し一人になりたい。退がれ。」
低く落とした声だったが、そこに怒りの色は消えていた。
八助は深々と頭を垂れ、力の入らない身体を引き摺る様にして、よたよたと蔵から出て行った。

近習が外したのを見届けると、成実はパタリと床に倒れ込んだ。
「う゛ー……痛ぇ…。」
言葉にしたところで和らぐ訳もないが、口を衝いて出てしまった呻き。
と、そこへ。
「思ったより元気そうだな。」
頭上から降る声に目線だけ移動させると、そこにいるはずのない人物の姿があった。
隻眼の従兄、総大将・伊達政宗、だ。彼の専売特許とも言える意地の悪い笑みを湛え、此方を見下ろしている。
「暇人め。小十郎に叱られるぞ。」
ゆっくりと瞼を下ろして吐いた精一杯の強がりに、政宗は苦笑しつつ傍らに腰を下ろすと、細い指で成実の髪を梳いた。
「カッコ良かったぜ、時。」
形に影の添う如く共に過ごした一つ違いの従兄弟、今此処にある安堵感に、成実はそのまま深い眠りについた。

この時の火傷で一つとなってしまった成実の右手指は、生涯開かないままだったと言われている―――。
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