伊達好きねこたの歴史関連や創作物についての呟き処+創作小説置き場(もちろんフィクション)です。
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2025.11.20Thursday
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「勲章だろ?」
2021.03.28Sunday
梵天丸+時宗丸+淡路+大森夫婦+米沢夫婦
どんなに大人びた事言ったって、時宗だって子供なんだよ。
時宗だって、本当は両親の元にいたいんだよ。
父上母上大好きなんだよ。
それにしても、時宗は書いてて楽しいです。
実は、淡路もかなり楽しいです。古風な喋り方が好きなんです♪
うちの淡路は家臣でありながら、何気に躾に厳しいよ(●∀´*)
ほっぺた引っ張ったり、延々お説教したりするけど、時宗は彼の肩車が大好きですvV
時宗丸、米沢へ。
梵の眼に関する記述有り。嫌な予感がする方は閲覧注意!
どんなに大人びた事言ったって、時宗だって子供なんだよ。
時宗だって、本当は両親の元にいたいんだよ。
父上母上大好きなんだよ。
それにしても、時宗は書いてて楽しいです。
実は、淡路もかなり楽しいです。古風な喋り方が好きなんです♪
うちの淡路は家臣でありながら、何気に躾に厳しいよ(●∀´*)
ほっぺた引っ張ったり、延々お説教したりするけど、時宗は彼の肩車が大好きですvV
時宗丸、米沢へ。
梵の眼に関する記述有り。嫌な予感がする方は閲覧注意!
「時宗丸。お前は明日から米沢で暮らすんだ。」
父の言葉はあまりにも唐突で、俄かには信じがたい内容だった。
「父上母上は?」
問いかけた小さな肩を、隣に座っていた母が抱き寄せ、
「淡路がずっとついていてくれます。米沢では輝宗公を父と思いなさい。」
と、静かに告げただけで、返答はなかった。
輝宗公は米沢城主であり、伊達家の当主、そして母の兄である。また、父の兄の子、つまりは我が従兄という事になる。
「お前は嫡男・梵天丸殿の小姓に選ばれたのだ。名誉な事だぞ。」
言葉の意味とは裏腹に、父は少しも嬉しそうな表情(かお)などしなかった。
「若君と仲良くするのよ。御事(おこと)は少し乱暴な所があるから…。」
長い黒髪の陰に流れた一筋の涙を見逃しはしなかった。
泣いてはいけない。嫌がってはいけない。そうしたら両親に迷惑を掛ける事になる。
――自分には選ぶ権限などないのだ。
幼いながらに感づいていた。
――今生の別れではない。
そう何度も自分に言い聞かせながら、時宗丸は出立の準備に取り掛かった。
数十名の供は門をくぐると同時に去って行った。時宗丸の元に残ったのは、二歳の時からのつきあいになる傅役・阿部淡路、唯一人。
幾度か訪れた事のある米沢城、いつもは傍らに両親がいた。城に入るのに躊躇った事など、一度たりともなかったのに、今日は―――。
繋いだ傅役の手を強く握り締めたら、握り返して来た。顔を上げると、淡路は穏やかな微笑を湛(たた)え、
「案ずる事はありませぬ。輝宗様は子供好きな方、御存知でしょう?」
知っている。
従兄弟とはいえ、こうも歳が離れていると我が子の様だと、頭を撫でられた感触も覚えている。
だが。どんなに優しかろうと、『我が子』と称されようと、父ではない。
我が父は一人だけ。
我が母は一人だけ。
厳しくも温かい豪快な父と、幼い頃は兄達に交じって木登りや鬼ごっこに勤しんだというじゃじゃ馬出身の明るい母、歳の離れた鴛鴦夫婦に挟まれた日々はとても幸せだった。
本家の定めた事には従うべし。
そんな慣習が忌々しい。
いずれ大人になれば評定衆に加わり、誰もこんな想いをせずに済む家中を作ってやる。
今はただその為に、一つ年長の従兄に精一杯仕えようと心に決めた。
久々に対面した本家の親子三人の様子は、時宗丸を驚愕させた。
中央に当主・輝宗、向かって右に正室・義姫、左に嫡男・梵天丸。
その並びは何ら変わりなかったが、いつもなら梵天丸を気にかけてチラチラと様子を窺う素振りを見せる義姫が完全に目を逸らし、梵天丸の姿を視界に入れまいとしている様にさえ見える。梵天丸はといえば、顔の半分を包帯で覆い、かつてはあれこれに興味を持って輝いていた瞳はその面影の欠片もなく、陰っている。
そういえば、少し前に梵天丸が疱瘡にかかったと聞いた。生命は取り止めたものの、右眼を失明した、とも。
「時宗丸、これよりはこの輝宗を父、お義を母、梵天丸は友であり兄であると思って甘えるが良いぞ。」
輝宗の言葉にただ黙って頭を下げたが、気にかかるのは暫くの間に変わってしまった、この城の空気であった。
「梵!」
挨拶が終わると早々に席を立ってしまった従兄を追いかけ、背後から呼び止めた。
「眼、見えないのか?」
「時宗様っ!」
失礼ですよ、と制止する淡路。梵天丸は無言のまま立ち去ろうとする。
「梵、どうしたんだよ!いつもの梵は何処行ったんだ!?」
その問い掛けに応えはなかった。まるで声を失くしてしまったかの様に、一言も発する事なく、彼は障子の向こうへと消えて行った。
初日は城内を案内された後、疲れてあっけなく眠ってしまった時宗丸であったが、翌日は朝から傅役を悩ませていた。
「はぁ…早速か……。」
目が覚めると主がいない。
布団は起きたままの状態で放置、着替えは昨夜自分が畳んで置いたままなので、おそらく彼は寝間着で城内をうろついているに違いない。
「まったく、落ち着きのない…。」
時宗丸は目を離すとすぐにいなくなる子供である。新しい興味の種を見つけては勝手に一人で東奔西走、迷子になる、若しくは何かに引き止められて帰って来られない、という件も少なくはない。
初めて出会った時もそうだった。
猫を追い掛けて木に登ったものの、降りられなくなり、偶然通りかかった淡路が助けてやったところ、時宗丸の父・実元に甚く(いたく)感謝され、召し上げられた―――という馴れ初めだ。
「この放浪癖さえなければ…。」
良い主なのだが。
枝の先端近くまで進み、戻れずに鳴いていた猫を助けようとしたら、自分も木から降りられなくなった、そんな弱い者を見捨てられない性格は、上に立つ者となるに望ましいのだ。
放浪癖さえなければ。
さて、早く主を見つけに行かねば。と、身支度を整え障子を開けると、想定外にそこには幼い主の姿があった。ちょうど部屋に戻って障子を開けようとした瞬間だったらしく、用途のなくなった右手をそのまま持ち上げ、「やぁ」と笑った。
「こんな早くからどちらへ?」
「ん…いや、ちょっと……探検。」
「勝手に出歩かないで下さいと常日頃申し上げておりましょうが。此処は勝手知ったる大森ではないのですよ。」
淡路は屈んで主と目線を合わせると、徐(おもむろ)に両手でその頬を引っ張った。
「いーっ!!悪かった、時が悪かったよぅ!」
「判れば宜しい。」
解放された頬を擦りながら、時宗丸はほろりと零した。
「でも収穫はあった。」
と。
あれから一年が経とうとしている。
時宗丸は、やれ剣術の稽古だ、やれ釣りに行こうだと誘いを掛け、梵天丸も少しは口を利く様になったものの、相変わらず笑う事もなく、大きな変化は見られない。
そんな或る日、資福寺での授業の帰り、城内に入ると、垣の陰から笑い声が聴こえて来た。
「ほぅら竺丸、綺麗なお花が咲いておるのぅ。」
「これこれお義、竺丸はまだ目も見えまいが。」
先日生まれたばかりの弟をあやす輝宗と義姫。その声を聴くなり、梵天丸は駆け出した。
「おかえりなさいませ」と声を掛ける家人達に目もくれず、一目散に自室へ飛び込む。
「梵!」
廊下から呼び掛けても反応はない。
「梵、開けるよ。」
日頃、主の許しなしには手を掛けない襖を、時宗丸は初めて自己の判断で開けた。
襖も障子も閉め切られた薄暗い室内には、布団に包(くる)まった梵天丸が蹲(うずくま)っていた。
「梵…。」
嫌がる事は承知の上。だが、この手を止める事は出来なかった。身を包む布団を力任せに剥ぐと、予想通り―――梵天丸は泣いていた。
「何すんだ馬鹿っ!出てけ!出てけ!!」
泣きながら声を荒げる梵天丸。此処まで感情を露わにする姿は初めてだ。
「悔しいのか?竺丸君(ぎみ)に親を盗られたみたいで。」
「黙れ!時には関係ないっ!!」
怒りに任せて身近な物を投げつけようとする主の手から脇息を奪い、そのまま床に押し倒して馬乗りになった。
「退け!馬鹿っ!!」
と暴れる主の一つしかない瞳を真っ直ぐに見据え、
「梵はズルイ!」
怒鳴りつけた。
突然の事に驚き、梵天丸は言葉を失って何度も瞬(まばた)きする。
「梵はズルイよ。輝宗様も義姫様も傍にいてさ…。」
「…母上は……梵を嫌っておられる…。」
「気味が悪いから?」
その問い掛けに、顔を背けた梵天丸の眉がぴくりと動いた。
「この眼が恐ろしいから?」
右眼を覆う包帯に手を掛ける。制止しようとする主の手を払い除け、乱暴に包帯を剥ぎ取ると、現れたのは血管が浮き出し不自然に窪んだ瞼、その奥にあるべき眼球は押し出され形も歪で、瞳は白く濁っていた―――。
「――っ!見るな…見るなよ!!」
「なんで?」
かつて誰もが気味悪がり、末端の女中や小者にまで物の怪に憑かれたのだと罵られたこの右眼を、眼前の従弟は少しも怖じる事なく、まじまじと見据えている。
「お前…気持ち悪くないのか?」
「全然。だってこれは病に勝った証…戦って勝ち取った勲章だろ?」
初めてだった。そんな風に言われたのは。
『周りの目など気にするな。人の価値は見た目ではない。』
そう言って微笑んでくれた父でさえ、肯定的な事は言わなかった。
そもそも時宗丸の様子からは慰めの心など微塵も感じられず、むしろ羨む様な声音にさえ思えた。
「時…。」
お前は強いんだな。そう告げようとした時―――梵天丸の見えない右眼に何かが跳ねた。
「時…?」
その両眼に溜まった涙、それはとうに容量を超え、ハタリハタリと梵天丸の頬に大粒の雫を落とす。
「…かぇ……たぃ。」
梵天丸の衿を掴んだ指に次第に力が籠っていく。
「かえりたい…帰して……大森へ、帰して…。」
消え入りそうな弱々しい声、先刻とはまるで別人の様な時宗丸。
彼の涙を見た事はこれまで一度もなかったし、おそらくこれからもないだろうと思っていた。
いつも気丈な年少の従弟の初めて見せる心の傷。
「帰してよぉ……。」
胸の上に乗ったまま蹲ってしまった時宗丸に掛ける言葉も見つからず、ただ震える背中を擦ってやるしか出来なかった―――。
「大変申し訳ない事を致しました。」
泣き疲れて眠ってしまった時宗丸を横目に、淡路が包帯を巻き直してくれた。
「いや。気にするな。」
短く応え、傍らに横たわる従弟の手を握る。
「お許し頂けますので?」
問い掛けると、梵天丸は瞳を細めてコクリと頷いた。
「梵の為に親と引き離されてるのに、時は不平の一つも言わなかった。本当は寂しくて仕方ないのに、ずっと独りで耐えて来た…。
決めたんだ。これからは梵が時の兄となる。寂しくない様に、梵が傍にいてやる。」
このおぞましい眼を勲章だと言った時宗丸。きっと彼は生涯の友となるだろう。
自分がいつかこの名家を背負った時、彼はその重みを支える柱の一つとなるに違いない―――。
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御尋ね者は此方から
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