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伊達好きねこたの歴史関連や創作物についての呟き処+創作小説置き場(もちろんフィクション)です。
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2025.11.19Wednesday
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「傅役という大役を」
2021.03.19Friday
梵天丸+時宗丸+小十郎+輝宗

御子様シリーズ第2弾。
彼が傅役になった日。
とにかく書いていて楽しかった(●∀゜人)♪

小十郎は誰もが認める忠臣ですが、若干腹黒かったりすると良い☆
梵は人嫌いだけど、父上の家臣の顔や名前はちゃんと把握してると思うのです。それが次期当主の務めと思ってる。
時は放っといたらどんどん暴走して、家主が考えなくても動き喋ってくれます(●∀´*)

後の殿と伊達の双璧は、兄弟というか、おとんとやんちゃな息子達というか…微笑ましいですなぁ。
なんか、この話の中では小十郎の黒い部分が妙にピックアップされてますが(誰だよ、書いたの!?)、この後、彼は梵に振り回されて胃痛持ちになってしまうのです。
哀れなり、小十郎…。



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その日はとても良く晴れて、小鳥のさえずりが心地好い朝だった。
だというのに、米沢城の一室だけはピタリと障子が閉ざされ、もう陽が昇って何刻にもなろうというのに、部屋の主は一向に床から出ようとしない。
「ぼーんー!殿がお呼びだよー!!いつまで寝てんのってか、起きてんだろ?」
時宗丸は障子越しに三度目の従兄の名を呼んだ。それでも室内は相変わらず無反応だ。
「ぼ…。」
「体調が!」
四度目に声を掛けようとした時、ようやく中から返事があった。
「体調が優れぬとお伝えしろ。」
嘘だ。
即座にその二文字が脳裏に浮かんだ。本当に体調が悪い時、彼がそれを口にしない事くらい重々承知している。
「何だよ、殿に嘘吐けってのか?このワガママ坊主!」
舌打ちと共に吐き捨てたが、障子の向こうがまた押し黙ってしまったので、時宗丸はドタドタとわざと大きな足音を立てて梵天丸の寝室を後にした。

米沢城主・輝宗の居間を訪ねると、下座に見慣れぬ男が座っていた。見覚えがあるような気はするが、はて、何処の誰だったか…?
「梵天丸様は気分が優れぬので、お部屋に籠城なさるとの事です。」
輝宗に向かって真顔で報告すると、時宗丸は小さく舌を出した。
「まったく…困った若君だのう……。」
輝宗はこめかみに手をあてて、溜め息を吐いた。
「今日は人を紹介すると伝えておったのに。」
ああ、それでか。
梵天丸の様子がおかしい原因を理解した。
極度の人見知り、というより人間嫌いの梵天丸だ。日頃ちょくちょく顔を合わせている輝宗の家臣や女中達にさえ関わるのを嫌うのだ、『人を紹介する』などと言われれば仮病を使ってでも逃げたくなるだろう。
「お会いする前から随分と嫌われてしまったものですね。」
下座の男が伏目がちに呟いた。しかし、傷ついた風ではなく、どちらかといえば愉快そうに見えるのは気のせいか―――?
「すまぬな。先に紹介するのが御事(おこと)であると言うておくべきであったか…。それでも逃げたやもしれぬが……。
 時宗丸。悪いがもう一度梵天丸の部屋へ行って、父がカンカンに怒っているから、すぐに来いと伝えてくれまいか。」
「はぁ。では。」
「あ、いや…。」
時宗丸が立ち上がろうとすると、男が掌を向けて制止した。
「宜しければ、私が直接参りたいと。」
すると輝宗は少し考えて、ポンと膝を打った。
「そうしてくれ。仲良くな。」
「御意。」

男を案内しながら、時宗丸はずっと考え込んでいた。
やはり会った事がある。しかし、記憶に薄いという事は、さほど重要な役職の者ではなかったはず。自分は決して記憶力が悪い方ではないと自負している。
さほどの身分も役職もない、と思われるこの男を奥州の名門・伊達家の嫡男に紹介して、輝宗は一体どうしようというのか。
「ご心配召されるな。」
まるで心を読まれたかの様な呼吸で、頭上から声が降って来た。驚いて振り返ると、男は何が愉しいのか、ニコニコ笑っている。
「悪いようには致しません。」
「いや、てか、アンタ誰…?」
そうこうしている間に目的地に着いてしまった。

「梵天丸様、御座(おわ)しますか?」
男が静かに声を掛けるが、案の定、中は無言だ。
「梵天丸様……失礼仕る!」
スパンッ!
小気味好い音を立てて、障子が開け放たれた。そのまま男はズカズカと室内へ踏み込んで行く。
「なっ!?」
あまりの強行に時宗丸は大口を開けて固まってしまった。自分でさえ梵天丸の許し無しには踏み入れない領域に、この男――!
部屋の主もやはり驚きを隠せず、褥から半身を起したまま、金魚の如く口をパクパクさせている。
「もう、とうに陽は高いですぞ。ほらほら、いつまでも床に入っていないで、起きた起きた!」
相手は大人の男。体格にも腕力にも差がありすぎる。
梵天丸は褥にしがみついて抵抗を試みたが、あっさりと男に抱え上げられ、宙に浮いた手足をバタつかせている。
「お前っ!お前、父上の小姓じゃないか!!何だこの狼藉は!?下ろせ!放せっ!!」
ああ、そうか。彼は殿の小姓だったか。
時宗丸はようやく平静を取り戻した。しかし、この状況で一体如何して良いのやら、ただ呆然と立ち尽くすしかない。
「と、時宗!こいつ追い出せ!!」
「やぁ、追い出せったって……如何やって?」
「まあまあ、そう仰らずに。」
男は明らかにこの状況を愉しんでいる。
左腕に梵天丸を抱え、右手でその頭を撫で始めた。まるで暴れ馬を諫める様な仕草だ。
放せ!無礼者!!とひたすら暴言を吐き暴れていた梵天丸も、蹴りつけても噛みついても眉一つ動かさない男の様子に、足掻いても無駄だと悟ると、やがて大人しくなった。
見計らって下ろしてやると、精神的にも肉体的にも疲れてしまったらしく、へなへなと力なく褥の上に座り込む。
「ようやくお話が出来ますな。」
男は精悍な顔つきで梵天丸の前に正座した。
「昨日(さくじつ)まで輝宗様の小姓を務めて参りました、片倉小十郎景綱と申します。」
「知ってる。」
いかにもつまらなそうな様子で、顔を背け右手をハタハタ振りつつ呟いた瞬間、眉をしかめて疑問符が飛んだ。
「昨日、まで…?」
背中に理由の判らぬ悪寒が走った。先程までの柔らかい微笑から一変、小十郎がニヤリと意地の悪い笑みを見せる。
「はい。本日より梵天丸様の傅役という大役を仰せつかりましたもので。」
「なっ!」
梵天丸と時宗丸の声が一つに重なった。
「何だってええぇぇぇーっ!!?」

輝宗の居間では障子を開け放して、縁側で戯れる雀を愛でながら、平穏な時間が流れていた。
「そろそろ来るかのう…?」
遠くから地響きにも似た足音が近づきつつあった―――。
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伊達成実・伊達綱宗・大崎義宣をこよなく愛する京都人です。

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