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伊達好きねこたの歴史関連や創作物についての呟き処+創作小説置き場(もちろんフィクション)です。
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2025.11.19Wednesday
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「趣味悪い……。」
2021.03.19Friday
政宗+成実+小十郎+政景+右馬助+綱元+その他のみなさん

大人シリーズ第1弾。
決戦、人取橋!

ついに書いた、人取橋の合戦!と言う程、合戦については書いてないけど…。
今で言うと高校生ですよ、敵陣突っ込んじゃいますよ、カッコ良すぎる18歳。
このシーンを使いたいが為にこのSSを書いたと言っても過言ではない!

実の弟よりも仲良しな従弟を、よもや死ぬだろうと思いながら戦地に送り出す、そりゃあ辛かったよね、政宗様(*●Д;*)
戻った時には「大儀であった」と言わせたかったんです。言えてないけどな。
腕が千切れちゃうよっ!!という部分に家主の成実観を込めてみました。『っ!!』に(笑)

そして家主はすっかり忘れていた。
人取橋当時、政景さんはまだ30代だったという事を!!
成実が『母の弟』と言ってるのに、まだ健在の母、いくつよ!?て話で…。
ゴメン、政景さん……。

流血・黒表現注意!



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硝煙の匂いを含んだ熱い風が頬を掠めた。
鉄砲の音、刀の切先の触れ合う音、気持ちの昂ぶった武者共の唸りに、傷ついて呻く声。耳障りな音達を少し心地良く感じてしまうなど、いつか誰かに称された様に、自分は天性の武将らしい。
「若っ!」
もの想いに耽っていたところ、割り入って来たのは、父の代から我が家に仕える老臣・羽田右馬助だった。
「囲まれてしまいましたぞ。これでは本隊との合流は無理で御座る。今ならまだ退路は開けます故、一旦退却致しましょうぞ!」
「退却?」
馬を寄せて来た右馬助の眼前に、成実は采配を突きつけた。驚いて右馬助が一歩後ずさる。
「何言ってんだ、右馬助!?俺達は伊達の先鋒、鉄砲玉だ!」
射抜く様な眼差しで真っ直ぐに老臣の瞳を見据え、少しの間をおいて、ゆっくりと眼を細め――口端を吊り上げた。
圧倒的な兵力を誇る周辺諸国の連合軍。士気高まる敵軍に取り囲まれ、完全に孤立してしまった少数部隊の先頭で、誰もが退路について考えているこの状況で、大将は―――笑った。
「逃げて何になる?退却して敗れるなど、末代までの恥!ならばいっそ、此処を我等の墓場として討死するまでだ!」
そして成実は振り返った。その瞳に映ったのは、大将の覚悟に胸を撃ち抜かれ、しんと静まり返った兵卒達。
「逃げたい奴は逃げれば良い。今離脱しても、後は追わない。覚悟のある奴だけついて来い!!」
そう叫ぶと、大将は先陣を切って、敵軍の渦の中へと消えて行った―――。

心に深く突き刺さるものがある。
それは昨夜の光景、昨夜の声。
我が居城・大森から手勢を引き連れて、総大将が陣を張る観音堂へとやって来た成実は、少し離れた場所で馬を降り、報せも出さずに、一人本陣へと向かった。
幼き日の悪戯心が蘇ってか、裏手から足音を忍ばせて近づくにつれ、よく知った二人の声が陣幕の向こうから漏れ聴こえて来た。竹馬の友とも言うべき従兄、総大将・伊達政宗と、その参謀・片倉小十郎景綱だ。
「来なければ良いと思っている。」
従兄が呟いた。
「心の何処かでは、そう願ってるんだ。大将としてあるまじき事だけどな…。」
「突然何をおっしゃいますやら。成実殿は殿の片腕であり、誰よりも信頼のおける身内であらせられる。殿の御召しに来られない訳がない。」
予想外の展開に、成実は暫く聞き耳を立ててみる事にした。
「小十郎、敵はうちの倍どころじゃないんだぜ?佐竹に芦名に石川に…その辺の奴等がぞろぞろと揃って畠山を助けに来やがった。本心は畠山を救う事より、伊達を潰す事が目的だろう。こっちは父上の弔い合戦だ。絶対に退く訳にはいかない。
 けどな。この状況で先陣なんて…死にに行けって言ってるも同じじゃないか。」
語尾が微かに震えた。きっと政宗は唇を噛んで下を向いている。そんな様子が手に取るように感じられた。
「あいつは必ず来る。そして、どんな苦境に立たされても、絶対に退かない。死ぬ気で刃を交えて、何処までも突っ走るに決まってる…。」
「殿はお優しくていらっしゃる。死なせたくないから、いっそ参陣しなければ良いなど。」
「呼ばなきゃ良かったかな?」
「呼ばなくてもすぐにバレますよ。それこそ、後でどれ程お怒りになるか…。」
「ハハ…そうだな。きっと拳をお見舞いされちまうぜ?」
人一倍気弱で、人一倍繊細で、けれど人前では高飛車で傲慢な殿様を演じる政宗。そんな彼の内に秘めた優しさを、成実は誰よりもよく知っている。
だって、ずっと一番近くにいたんだからな――。
梵は俺が守ってやるって、約束したんだからな――。
それからわざと遠回りして時間を稼ぎ、何食わぬ表情(かお)で総大将の元へ参陣した。
つい暗くなりがちな政宗に懐かしい想い出話など投げ掛け、場が和んだ頃、
「梵は此処で茶でもすすってな。俺が何処ぞの魔王みたいに、敵将の首で髑髏酒でも作って来てやるからさ。」
と立ち上がると、政宗は心底嫌そうな表情をして、
「趣味悪い……。」
と呟いた。
夜空に浮かぶ彼の兜の様な月を仰ぎ、成実は大きく息を吸い込む。
「梵!俺は必ず生きて戻る。だから…そんな表情すんな!」
振り返ると、政宗は予想通り表情を曇らせていた。片方しかない瞳が微かに潤んでいるように見える。
そそくさと眼を逸らし、何事もない風を装ったが、今更だ。長年共に過ごして来た成実をそんな取り繕いでは騙せないし、先刻の盗み聴きでハッキリと本心を聞いてしまっている。
「必ず生きて戻る!俺は嘘は吐かない。約束は守る―――知ってるだろ?」
強い眼光を放ち、突き出した右の拳。
ああそうだ。
どんな書面で交わした誓約よりも、成実の言葉は絶対だった。
いつだってそう。幼い頃から曲った事が大嫌いで、何事も包み隠さず、明白に物を言う。口にした言葉は決して違えない。
その成実が生きて戻ると言うなら、必ず生きて戻るのだ。
政宗は口角を上げて、己の右の拳で成実のそれを打った。
「必ず生きて戻れ。」
それを聞くと成実は白い歯を覗かせて、幼い頃から変わらぬ笑顔で軽く手を振りながら陣幕を後にした。
そんな二人の様子を、小十郎は穏やかな眼差しで見守っていた。

―――それはまさに地獄絵図だった。
無数の死体の隙間を縫う様に歩こうとしても、いつの間にか、手だの髪だの千切れた耳だのを踏みつけている。
馬は何処で亡くしたんだっけ?
ズルリズルリと重い物を引き摺る様な音がついて来る。きっとこれは己の脚だ。
意識が朦朧とする。
気がつけば死体の山の中にいた。
あの丘から駆け降り、佐竹軍に突っ込んだのは覚えている。
右馬助…右馬助はどうしただろう?
梵は……無事だろうか?
霞む視界の中に、懸命に伊達の旗を探す。
早く帰らなければ。
重く圧し掛かる睡魔に身を委ねたら、きっと約束を果たせなくなってしまう。
眠ってはいけない。
眠っては―――。
しかし瞼はいつになく重く、必死の抵抗虚しく意識を手放しそうになった、その時。
「成実っ!」
誰かに名を呼ばれた。聞き覚えのある声だ。
「成実っ!しっかりせい!!」
声の主はガッシリと成実の二の腕を掴んで、乱暴に身体を揺する。
ああ、もう、痛いって!腕が千切れちゃうよっ!!
漸く焦点の合った瞳に映ったのは、母の弟・留守政景の顔。
「お…じ……うえ?」
「よく帰った成実。殿が首を長~くしてお待ちじゃあ。
 脚を折っている様だが、お前を担いだりしたら儂の腰が折れちまうでの、何とか自力で歩いてくれ。」
―――叔父上、酷いや……。

陣幕が近づくにつれ、生きている感覚が蘇って来た。
伊達の旗を背負った見知らぬ兵卒に肩を借り、入口まで辿り着くと、
「伊達成実殿、ご帰還!」
と声が掛かり、ほぼ同時に中から人影が飛び出して来た。
一つしかない眼をめいいっぱい見開いて、今目の前にいる者の姿をその瞳に焼きつけようとしているかの様。
「戻ったよ…梵。」
小刻みに震える紅く濡れた手を差し出すと、政宗は骨が砕けてしまうのではないかと思う程強く、その手を握った。
「―――大儀…。」
言葉に詰まったまま俯き、押し黙ってしまったが、その心情は握った手が何よりも強く明確に物語っていた。

結局、この戦―――世にいう『人取橋の合戦』は、白黒決着のつかないまま終戦となった。
日没の為に束の間の休息を迎え、朝が訪れると、敵の大軍は消えていたのだ。
後に知ったところには、連合軍の主格・佐竹氏の領内に他国が攻め入り、本国守りの為佐竹軍が帰国。元々寄せ集めだった連合軍は、核を失って解体した―――との事。

「成実に感状を遣わす。」
重臣を集めた席で政宗が言った。
骨折した脚を投げ出してだらしなく座っていた成実は、思いがけず呼ばれた己の名に「へ?」と間抜けな声を出してしまった。
「此度の戦で一番の軍功を挙げたのは、満場一致でお前だからな。」
「ぼ……殿…。」
総大将は薄い唇で弧を描き、鋭い左眼で真っ直ぐに成実を見据える。
「―――ありがたく。頂戴致します。」
小姓の手を経由して書状を受け取る。自由の利かない身体で、きちんと礼を取れない事がもどかしかった。
「それから―――綱元。」
「はっ!」
「70を超えた老骨に鞭打って殿(しんがり)を務め散った御事(おこと)の父・左月良直にも政宗から感状を贈りたい。」
柔らかく微笑む主の粋な采配に、部屋の端々から感嘆の声が挙がり、亡父を称賛された鬼庭綱元は、
「かたじけのうございます。」
深々と垂れた頭を暫く上げられずにいた。

とりあえず伊達政宗は御家滅亡の危機をこうして乗り切ったのである―――。
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