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伊達好きねこたの歴史関連や創作物についての呟き処+創作小説置き場(もちろんフィクション)です。
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2025.11.19Wednesday
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「もう探し物は必要ない」
2021.04.17Saturday
時宗丸+十波(玄松院)

2009/7/16、成実命日企画です。
成実と玄松院が今も幸せであれば良い。そんな祈りを込めて書きました。

小さい頃から時宗に片想いの十波姫と、全然気づいてない時宗。
時宗にとっては十波は妹みたいな存在であって、十波ちゃんの気持ちは全く理解してません(●∀´;)
でも、将来、ちゃんと約束守ってくれるんだよ♪
約束は必ず守るが彼の信条ですので。

冒頭『本家から御兄様方がいらっしゃる』。
そう、実は、梵も来てるんです!
すいません、全く出番なくて…。
成実の命日記念だから、必要最小限のもの以外は排除してしまいました。
家主はホント、伊達家の当主を何だと思ってるんだ!?



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それは私(わたくし)がまだ随分と幼かった頃の事で御座います。
本家から御兄様方がいらっしゃる。その話を聴きつけた私は、侍女達の間で噂の呪(まじな)いを信じ、一人城を抜け出したので御座います。
裏山の椎の根元に咲く思草(おもいぐさ)に祈ると願いが叶う。
そんな噂を頼りに、正確な場所も知らぬまま、幼い私は森へと入ってしまいました。
生い茂る木々の中、辺りは次第に暗くなり、やがて雨まで降り出す始末。
思草を見つけるのだという意気込みも何処へやら、私は急に心細くなり、やはり戻ろうかと振り返るも、自分が何処から来たのか、帰る方角も見失い、ついに泣き出してしまいました。
されどこんな森の中、さらには激しい雨音、通り掛かる人もなく、救いの手などあり様も御座いません。もう二度と戻れないのではないか。そんな不安を忘れさせるかの様に、急激な疲労感が私を眠りへと誘(いざな)っていきました。

何刻が過ぎたのか。
気がつくと雨足は弱まり、暗雲の隙間から僅かに陽が射しておりました。
何とか自分で歩いてみようか。歩き続ければいずれは森を抜けられるだろうか。根拠のない希望を胸に立ち上がろうとした時でした。
「こんな所にいたのかぁ。」
聞き覚えのある明るい声。
「ほら帰ろ。寒くないか?怪我してないか?」
差し伸べられた温かな手。それは一番会いたかった笑顔。
木陰に潜んではいたものの、降り出しの雨と泥に塗れたみすぼらしい我が身。
こんな装を見せたくはなかったけれど、これで帰れるという安心感が、そして自分を見つけてくれたのがこの人だったという喜びが、また瞼に熱を持たせ、私は目の前の再従兄にしがみつき、泣きじゃくったので御座います。

「あんな所で一体何してたんだ?」
上衣を掛け私を負ぶって歩きながら、彼が問い掛けました。
「探し物を…。」
「探し物?何を?」
彼は不思議そうな表情(かお)をしましたが、私はそれには答えず、
「時兄様。大人になったら十波を御嫁にしてくださる?」
逆に問い返すと、彼は嫌な顔一つせず、
「こんな危ない事しないって約束するならな。」
と、高らかに笑いました。
「なら、もう探し物は必要ないです。」
私はぽつりと独り言の様に零して、彼の肩に頬をつけ、その温もりに身を委ねたので御座います。
雨上がりの空に架かる七色の虹が、類(たぐ)う物の無い程に美しかったのを、今でも鮮明に記憶しております。

思草は見つからずとも、それに掛けたかった願いは、八年の後に実を結ぶ事となったのでした。
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